ストレンジ・デイズ
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あまりにも鬱陶しい鬼頭に火花を飛ばそうとしているところを、善に見つかって怒られる等のプチハプニングはあったものの、特に誰にも見つかることなく俺達は花火を楽しんでいた。
最後の締めとして線香花火を誰が一番消さずにいられるかという勝負をすることになり、俺達はいっせいに花火に火をつけた。
「俺が絶対に勝ーつ!」
「キョウちゃん、あんま動くとすぐ消えるよ」
唄子に忠告された通り、大人しくしゃがみながらパチパチはじける線香花火を見下ろす。なんとなく退屈だなコレと思っていると、隣の善と鬼頭の会話が聞こえてきた。
「今度のオフの日は僕の持ってるビーチに行こう、善」
「えー、やだよ。だってそれ海外だろ。近くの海になら行ってもいいけど」
「日本の海は人が多くて嫌になるじゃないか。旅費は僕が持つからうちに来てくれ」
「うーん、それも悪いしなぁ…」
「善! そんな奴放っといて俺と遊べばいいだろ」
どうせサッカーばっかりで忙しいだろうと遠慮していた俺の前で善を誘う変態に我慢ならず、腕を引っ張って鬼頭との間に割り込んだ。何を勘違いしたのか鬼頭はそのまま俺を抱き締めてきた。
「心配いらないよハニー、もちろん君も連れていくさ」
「誰がてめーと行くっつったよ! 俺は善を誘ってんの! だいたい俺海は無理だし」
「キョウ、もしかして泳げないのか?」
「う…いや……」
泳ぎに問題はないが、小宮今日子としては水着になれない。さすがに水着となるとペチャパイでは通らないだろうし、女装と女物の水着を着るのとでは変態度が格段に違う気がする。
「キョーコさんは泳がなくていいよ! 水着姿さえ拝められたらそれで。その美しい肌が焼けたら大変だから、僕が全身に日焼け止め塗ってあげ…」
「黙れ変態!」
あまりの気持ち悪さに鳥肌がたったところで奴を思いっきり後ろに張り倒す。派手に転がってのびる奴を無視して俺は善の手をとった。
「あいつ連れてきたりしないよな、善。二人だけで会ってくれるよな。海じゃなくて、近場でなら遊んでくれるだろ」
「ああ、もちろん」
「やったー!」
「もしもーし、お二人さん、とっくに線香花火消えてるんですけどー」
善と盛り上がっているところに唄子に声をかけられ、勝負していたことを思い出す。奴の言う通りいつの間にか火はすべて消えてしまっていて、これでは結局誰が勝ったのかわからない。
「八十島君とキョウちゃん、お似合いだもんねー。邪魔しちゃってごめんね」
「俺と善はそんなんじゃねぇ」
スキあらば人をホモにしてこようとする唄子を思い切り睨み付ける。いや、善の方は俺を女だと思ってるからホモにはならないのか。いや、男に金もらって寝てたんだからこいつはとっくにホモ……って何どうでもいいことを考え込んでいるんだ俺は。
「…ちょっとトイレ行ってる」
雑念が入り込んでどうしようもなかったので、ジュースをがぶ飲みしていたせいで先程から我慢していた生理現象を解消しに行くことにした。
「あ、あたしも行く!」
「お前はついてくんな」
「何でよ!」
のびてる鬼頭は善に任せ、俺は花火を中断して立ち上がった。俺が逃げ出さないようにと腕をしっかり掴んでくる唄子と口喧嘩しながらトイレへ向かった。
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