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ストレンジ・デイズ



その日の夜、俺は善に余った夕御飯をわたす名目で遊んでもらおうと連絡を取った。いつも談話室で会うのだが、今日は余計なものがくっついていた。

「それ、善の方が大きくないか?」

「そんなことねぇよ。人のがよく見えるだけだろ」

談話室のソファーに並んで座るのは善と鬼頭だ。奴らは一つのメロンパンを二人でわけあって、その大きさでもめていた。

「いや、絶対大きい。交換しよう」

「嫌だー、やめろってー」

「何イチャついてんだお前ら」

俺がビーフシチューを持って奴らに話しかけると、二人ともじゃれあうのをやめた。元ルームメートだからなのか善と鬼頭はまったく違うタイプなのに恐ろしく仲が良かった。

「キョーコさん! 僕に会いに来てくれたんだね! 嬉しいよ!」

「んなわけねーだろ」

「ああっ」

俺に飛び付いてこようとする鬼頭の胸を突き飛ばし再び椅子に座らせる。俺に乱暴に押されて嬉しそうな声を出すのが大変気持ち悪い。

「何でお前らが一緒にいんの? しかもこんなところで」

善と鬼頭は仲は良いが、学校にいる間一緒にいる分、寮ではあまり話しているところを見ない。善は仲のいい友達がたくさんいるが、善の友人は鬼頭とは仲良くないらしい。当たり前といえば当たり前だが。

「今日、うちの部屋に菘が泊まりに来るから」

「は? マジで?」

頷く善と鬼頭にムカムカしたものが込み上げてくる。何だか今までとは別の意味で鬼頭が嫌いになってきた。

「なんでだよ善、俺とは泊まってくれねぇくせに!」

「キョウ、それ何か誤解を招くから」

「僕ならキョーコさんが望むならいつでもオッケーだよ」

「うるせぇ! てめぇはすっこんでろ」

「大丈夫、僕は婚前交渉はしない主義だ。嫁入り前の君に指一本触れたりしない」

「おぞましい事を言うな。善、なんでこいつと仲良いんだよ! 性格全然違うのに!」

触れたりしないという割に抱きついてこようとする鬼頭を足で蹴り続ける。わりと手加減なしだがドMな奴はすごく嬉しそうに頬を染めていた。

「キョウだって、阿佐ヶ丘さんと仲良しじゃん。それと一緒だって」

「キメェこと言うなよ! 頼むから!」

誰と誰が仲良しだというのか。そんな気持ち悪いことを言われては鳥肌がたって仕方がない。

「ならキョウも一緒に遊ぶ? さすがに部屋には入れられねーけどさ」

「えっ、俺も…? な、何やんの?」

「花火。こっそりできる穴場があるんだぜ」

鬼頭と一緒にいるのは嫌だが、善に誘われると無下には断れない。それに今まで勉強ばかりしてたので、遊びたくて仕方なかった。

「やる! 俺もやる!」

「やった! キョーコさん! 僕と一緒に思い出を作ろう!」

「触んな」

「あんっ」

デレデレ顔の鬼頭を蔑みの目で容赦なくビンタする。恍惚の表情を浮かべ地べたで項垂れる奴を見て不安になってきたが、善が楽しそうににこにこしているので俺は鬼頭を無視して善と遊ぶつもりで約束を取り付けた。


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