トラベルマン 1 「東京都新宿区?」 [あぁ] 「…そこ、ここだよ?」 […やっぱりな] 龍瑠は深いため息をついた。 ただ今通信中です。 ...隣には洸がいます。 「怪物がそこに出るってこと?」 洸が横から口を出す。 「ちょっ…声聞かれたらダメなんだって!人間に話したってばれたらクビって言ったじゃん!」 「あ、ごめん」 […ん?どうした志?誰かいんのか?] 「テレビの音です!」 テレビをつけました。 ―――これで少しはごまかせるだろう… [とにかく、長が言うにはそこに怪物が出るっていう予想だ。スーパーのやつらからの情報だから、たぶん当たるだろうって言ってる。さっさとそこから離れた方がいいぞ] 「予定時刻は?」 [1週間後] 微妙だな。 でも1週間もあれば、きっと日本のすみっこにまで逃げれるだろう。 もちろんそんなことしないけどね。 わたしは怪物を見てみたくもあった。 […お前、動かないつもりか?] 見透かしたようにいう龍瑠。 「あっはっは、まっさかぁ」 [逃げないで、怪物を見てみるつもりなんだろ?] ばれた! 「でも志が動くんなら、僕も動かなくちゃいけなくなるよ」 「しゃべるなって言ってるでしょ!」 […おい?聞いてる?] 「テレビです!」 今、お笑い番組中ですよ。 [いいからとにかくそこから逃げろ。もしそこに本当に怪物が現れたら、スーパー達が絶対にくる。まき込まれるぞ] 「分かってるって。ちゃんとそん時まではどっかに行っとくから」 [ほんとだな?] 「指切りげんまん」 […できないんですけど] ピッ 通信を切る。 「…怪物ねぇ」 洸がつぶやいた。 「人間の心って、食べれる物なんだねぇ」 「…まぁ、わたしは見たことないけど」 怪物自体は。 「どんな醜い姿なんだろうねぇ」 「けっこう見えなかったりするんじゃないの?」 「人間には見えないとか何とか龍が言ってた」 「えーじゃあ僕には見えないの?」 「さぁ」 わたしは立ち上がってお茶を飲みに行った。 「…怪物って、どうやって倒すの?」 洸がソファに寝転んだまま聞く。 「分かんない。さっきも言ったけど、見たことないから」 「僕さぁ、怪物って、結構倒しやすかったりするんじゃないかなって思うんだけど」 「…はぁ?」 わたしは洸を振り向いた。 「なんか武器とか持たなくちゃいけないのかな?」 「知らない」 「ていうか、志たちって仕事する時に武器持ったりして戦ったりする?」 「する時もあるかな」 ...怖いやつらがうようよいる世界もあったから。 命の危険がない世界は、本当はごくまれだ。 「怪物もさぁ、生き物なんじゃないかな…」 「………」 …生き物ね。 「…さぁ、会ってみないと分かんないね」 わたしは答えた。 [次へ#] [戻る] |