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幻想詩編
故に蛇は紅く染まる
彼は呪った

この誘惑が鎖になるだろうと

彼は呪った

人々を試した報いが訪れると


「ご覧、綺麗な星だろう」

「手に取って見せようか、手を貸しておくれ」


彼は呪った

奥ゆかしくも愚かな人間を

彼は呪った

満足を知らぬ歪んだ人間を


「ご覧、なんと憐れな人だろう」

「涙を流してあげようか、少し目を拝借したい」


彼は呪った

底知れぬ人の闇を

彼は呪った

煌めきを失わない無垢な瞳を


「ご覧、あの丘の向こう側に自由がある」

「私が連れて行こう、足を貸しておくれ」


彼は呪った

他人を犠牲にした賢者を

彼は呪った

己を犠牲にした亡者を


「ご覧、まるで蛇のようだ」

「その腹を裂いて見てご覧!」


彼は呪った

呪い足りぬ人の数に

彼は呪った

救われぬ人の多さに

彼は呪った

その欲深さに

彼は呪った

その強さを


そして最後に


彼は独り


そっと泣いた


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あきゅろす。
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