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幻想詩編
毒椿
明日になると、世界が壊れる

それでも彼女は咲き誇る

幾千年の命よりも

美しく孤独に



枯れるが美徳



体の奥で音がした

ぐちゃり、何かが腐る音が

赤い花弁が 地に落ち腐る


心の臓を掴まれて

土に還ればいい、と


腹の中で何かが言った



大地が死んだのなら

この身を裂いて土にしよう

花を見たいと言うのなら

この血を撒いて花を咲かせよう


巡り廻る 最期の夢は安らかで

廻り巡る 命の流れは汚水にまみれる



明日になると、貴方が消える

許して貰えないと知りながら

それでも私は泣き続ける

杯は

まだ涙で満たされていない



喉の奥を引き裂いた

どろり、熱い鉛が血を燃やす

黒い魂が、這い出してくる


臓物を引きずりだせ

喉を鳴らせ

誰も知らない


瞼の裏で、誰かが笑った


命の泉が枯れ果てたなら

共に涙を流しましょう

風が消えたのなら

この髪を編んで繋ぎ止めよう

この地を去ると言うのなら

この皮を剥いで靴底にしよう


丘の向こうを目指すのなら

星となり標になろう





共に歩んだ地を呪い


何処かの再会を願って

魂の啼く 命の丘で

友は去り 時は永遠を知る

荊の空は重く

それでも私は此処に居る


独りになっても


時を失っても


毒の華を咲かす為


私は



ずっと此処に居る



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あきゅろす。
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