Zill O'll infinite 光の差す方へ@ 光を知らずに、ずっと生きていくのだと思っていた。 暗い、暗い閉ざされた部屋の中で、外の世界も知らずに、そのままずうっと、生きていくものだと……そう、思っていた。 だけど、あの時光を与えられてから――あの人と出会ってから、自分の人生は大きく変わってしまった。 そして、自分が決して目にする筈の無かった新しい世界……外の世界を教えてくれたのも、またあの人だった―― 「……女王様。アトレイア女王様、どうなさいましたか?」 侍女の自分を呼ぶ声で、ふと我に返った。 「あ、すみません……少し考え事をしていました」 「お顔の色が少し優れない様ですが……もう今日はお休みになられますか?」 「はい……今日のお仕事はここまでにさせてもらいます。 すみません……もっと頑張らなければいけないのに」 「ご無理は禁物ですよ、女王様。少しずつ、ゆっくりとこなしてゆけば良いのです」 「はい……ではまた明日から、頑張ります」 「ええ。お休みなさいませ、アトレイア様。 大丈夫ですよ、貴方様ならきっと良きロストールの女王になられますわ」 ――ロストールの、女王。 忘れ去られた王女であった筈の自分が、女王となる日が来ようとは……あの頃なら考えもしなかっただろう。 だけど運命の歯車は回り、確かに自分は今、ロストールの女王としてここに立っている。 ……だけど、一番傍に居てほしかったあの人は、ここではない何処か遠くに旅立ってしまった…。 その時、一人の侍女が姿を現した。 「女王様、貴方にお会いしたいという方がいらっしゃいますが……お通ししてもよろしいですか?」 「すみません……今日はもう疲れてしまったので、また後日にしてもらえませんか?」 「そうですか。お見えになったのはナツキ様でございますが……よろしかったですか?」 ナツキ。その名前を耳にして、胸の鼓動が高鳴るのを感じた。 暗い世界しか知らなかった自分に光を与えてくれて、そして新しい世界を見せてくれた、初めての人。 そして彼は、一番逢いたくて堪らなかった人物で。 「ま、待って……!今すぐこちらに、お通しして下さいっ!」 思わず声を荒げてしまった自分の姿に、侍女は優しく微笑んだのだった。 [前へ][次へ] |