Zill O'll infinite C 「そうだった。思い出したわ、全部。あの日、ブローチをあげたあの子が兄様だったのね……」 琥珀色のブローチを手で弄びながら、あの日少女だった娘――イリアは感慨深げに呟いた。 ブローチと同じ琥珀色の瞳には、あの日を懐かしむ慈しみの色が灯されている。 「やだな、どうして今まで気付かなかったんだろう。あの男の子が兄様だってこと」 「薄情な奴だ。俺は早い段階でお前だと分かったぞ」 「ご、ごめんってば」 「……まあ、それも仕方ないだろう。名も名乗らなかった上、あれからお互いに色々とあったからな……」 当主としての執務に追われ、政敵との戦いに身を投じていった少年。 悪徳代官に虐げられる日々、そして反乱へと身を投じていった少女。 あの日の約束はいつしか記憶の奥底へと沈んでいったが、それでも運命は彼らを見放したりはしなかった。 長い刻を経て――あの日の二人は領主と反乱軍のリーダーとして、黄金色の畑で再び巡り会った。 幾多の困難を共に乗り越え、育まれた二人の絆。 あの日少年だった青年の傍らには今、恋人となった娘の姿があった。 琥珀色の瞳を細めて微笑む彼女の笑顔は、あの日と変わらぬ愛しい光を湛えたままで。 「兄様、約束守ってくれたね。ちゃんと、私を迎えに来てくれたね……」 そっと囁き寄り添ってくるイリアの身体を、レムオンは優しく抱き締めた。 胸元に感じる愛しい温もり。まるで暖かな陽だまりの中に居るかのような、そんな錯覚さえ覚える。 「兄様に約束するわ。何があっても、私はずっと貴方の傍に居るって……」 「……ならば、俺もお前に誓おう。例え闇に閉じ込める事になろうとも、決してお前を離さないと――」 「約束よ。絶対に破ったりしちゃ、駄目なんだからね……?」 そっと、唇を重ね合わせる。 約束のしるし。永遠の愛を誓う証。この絆は決して誰にも侵させはしない。 確かな誓いを胸に、あの日の二人はいつまでも、いつまでも優しく寄り添っていたのであった―― ☆後書き☆ ロストールとノーブルは近いので、小さな頃に一度くらい会っていても不思議は無いハズ!と、妄想ぶっこいてみました。 キヨミズ様に(激烈一方的に)捧げます☆(超←迷↓惑↑) [前へ] |