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Zill O'll infinite
バレンタインSS〜王城主編
2月某日、とある二人の少年少女の会話。





「あっ、こんな所に居たのねナツキったら!」


「アイリーン!どうしたの、そんなに慌てて……」


「どうしたの、はこっちの台詞よ。全く、今年もナツキは大人気なんだから……」


――ナツキの手には、両手一杯のチョコレートが。
どうやら、バレンタインプレゼントに貰ったものらしいが……?


「う、うん。ちょっと出歩いてたら、皆に貰っちゃって……どどどうしよう、俺甘いものは苦手なんだけどな。でも折角くれたんだから、ちゃんと食べなきゃいけないよね」


「……それだけの量を?そんなに無理しなくたっていいわよ。
……本当にナツキは優しいわねぇ(少し鬱っぽく溜息)」


「あ、うぅ……(何か感じ取ったらしい)。で、でも皆の行為を無駄にする訳にはいかないし……」


――ますますドツボにハマってゆくナツキだが。


「ま、そこがあなたのいいところなんだけどね(微笑)
……はいっ、私からもあげるわよ。バレンタインのプレゼント!」


「……! あ、ありがとう。凄く、嬉しいよ……(微笑)」


「ま、まぁ幼なじみだしね。義理ってやつよ、義理!そこんとこ、勘違いしないでねっ!」


「うん、それでも嬉しい。
……本当にありがとう、アイリーン」


「な、何よ。真剣になっちゃって……」


――おぉ、このじれったい二人も、少しは進展しちゃいますか!?


「そ、それはともかくっ!あなたは甘いもの苦手だから、チョコレートじゃなくてパンケーキを作ってみたのよ」


「へぇ、パンケーキかぁ……。
………………………………ってあれ、今作ったって言った…?」


「そうよ〜!もう、本当に大変だったのよ?何故か変な匂いを発し始めてきちゃうし、釜戸は2回も爆発しちゃうし……」


「(あ、あわわわわ……)」


――ユーリスにも引けをとらない爆発魔っぷりである。


「でも安心してちょうだい!出来上がりは完璧なのよ?ほら、開けてみて!」


「う、うん……」


――おそるおそる、プレゼントの飾りを紐解き始めるナツキ。
あんた、男だよ……!


「…………えーっと。パンケーキ、なんだよね、これわ……」


「う、うるさいわね。ちょっと見た目は悪いけど、これは立派なパンケーキよ!」


「ぱ、パンケーキってこんなに黒くてぷるぷるしてるものなんだ……うん、新たなる発見だ……」


「そそそうよっ!ナツキったら料理が趣味なのに、そんな事も知らなかったの?」


「……ってうわあぁ!このパンケーキ、何か今動いた!確実に動いた!ぜ、絶対生きてるってこれっっっ!」


「な、何を馬鹿な事言ってるのよ!目の錯覚よ、錯覚!きっと幻覚でも見たのよ!」


「…………これ、食べなきゃ駄目、だよね……?」


「あ、当たり前じゃない!折角心を込めて作ったんだからっ!」


「わ、わわわ分かった……!なら、有り難く、頂きます……っ!」


――ナツキ、あんた今世界で一番輝いてるよ!


でもやっぱ無理はするな……主人公が死んじゃったら、話が進まなくなっちゃうじゃないか……。


「……きゃあああぁっ!ナツキ、ナツキったら!ちょっと、しっかりしなさいよおぉっ!」


――どうやら、少し遅かった様で。


その後しばらく、ナツキの姿を見た者は誰も居なかったという――


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あきゅろす。
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