初めての笑顔 珍しくユーリに呼び止められた。 「カイ。」 「・・・・・・なんだ。」 「ちょうどいい、これを頼む。」 「・・・・・・何だ、コレは。」 「買出しのリストだ。」 「ふざけるな、何故俺が・・・」 「誰も貴様だけとは言っていない・・・なまえと一緒だ。」 「っ?!・・・・断る。」 なまえというのはチームのマネージャー。 俺と同い年の小柄で内気な女。 そんな俺と性格が正反対に近いアイツとは相性が合わないらしく、 あまり話したことがなかった。 そんなお互いに印象の悪いままでこんな偶然にぶつかってしまう。 もちろん、俺は断ったが・・・・ 「・・・・生憎、拒否権はない。」 「何?」 「大体、そうでなければ貴様に頼まない。」 「・・・・?」 「今日は俺もボリスもセルゲイも急用で頼む奴がいない。」 「だったらアイツ1人でも・・・」 「頼んだものを見てみろ・・・どうみても女1人では無理だ。」 リストを見ると、確かにkg単位のものもある。 女1人では絶対に無理だろうという買い物。 「わかったか?・・・適当な時間になったらなまえが呼びに来る。」 「・・・・・・・・・チッ。」 そういって、ユーリは部屋をでた。 ******* 部屋で過ごして時間を待っていると、 コンコンと遠慮がちな音が聞こえた。 「・・・・入れ。」 「・・・あ、あの・・・・・カイ君、時間です・・・。」 おずおずと顔を出して言うなまえ。 やはり俺の事が少し怖いのだろう。 証拠に同い年だというのに敬語になっている。 心なしか涙目にもなっている。 「・・・ユーリ君から聴いてますよ・・・ね?」 「・・・・あぁ。」 「あの・・・ごめんなさい・・・・あたしが1人で行けばよかったんですけど・・・。」 「・・・どう考えても貴様1人では無理だろう。」 「そ、そうだよね・・・・・。」 さらに怖がらせたのか、涙が落ちそうなくらい目が濡れている。 「・・・・・・行くぞ」 「あ、はい。」 ***** 「・・・・・・・・これだけか。」 「はい・・・多分。」 「そうか・・・・・なら、帰る。」 そういって帰る方向へ向かうと 「あ、あの!!」 「??」 「・・・・良かったら、どっかで休みません・・・か?」 来てくれた御礼もかねて、と言う。 「・・・・・・・・・。」 「あの、ダメならいいんですけど・・・。」 「・・・・・行くぞ。」 「え・・・?」 「どこかで休むんだろう・・・・。」 「は、はい。」 そういうと、少しニコッと微笑む。 たまにはこういうのも悪くないと思った。 ****** 「ど、どうぞ。」 「・・・・あぁ。」 「・・・・・・・・ごめんなさい・・・。」 「??」 「ホントは嫌だったのにユーリ君に無理やり・・。」 「・・・・・。」 最初は確かに腹が立っていたが、 今は別にそういう気分ではない。 むしろ、来て良かった、という部分もある。 「私、いつもダメなんですよね・・・」 「・・・・?」 「こんな性格だから、カイ君やユーリ君みたいにはっきり言える人が羨ましいから。」 「・・・・確かに、言いたい事は言っているな。」 「はい・・・わかってると思いますけど、カイ君と私は正反対ですし。」 「・・・・・(自覚してるところもあったのか。)」 「だから正直、カイ君との買出し・・・・凄い不安でした。」 「・・・・そうか。」 「でも今は違いますよ?」 「?」 「意外な一面とか見れたり・・・・凄く優しい人なんだな、って思いました。」 「・・・・俺がか?」 「えぇ、今でも1番、重い物持ってくれてましたし。」 俺の目の前で話すなまえは楽しそうに話す。 こちらも意外な一面が見れたが、なによりも・・・・ 「・・・・・・笑った、な。」 「え?」 「初めて笑った・・・な。」 初めて見せた笑顔。 誰もがひきつけられる、笑顔。 俺には到底、マネできない。 「・・・・そうですね、カイ君の前で笑ったの初めてですね。」 「・・・・・・・じゃないか?」 「え?」 「そっちの方が・・・・いいんじゃないか?」 そういうとほんの少しなまえの頬が桜色に染まる。 「・・・・そ、そうですか?」 「・・・あぁ。」 「じゃぁ、そうします・・・」 意味のわからない返事に、思わず笑ってしまう。 「あ!」 「?」 「カイ君も笑いましたね!」 「なっ・・・」 「私も初めて見ましたよ?」 さっきの顔はどこやら。 興味津々に顔を近づける。 ・・・・・・・・前よりはマシだが、 やはり、まだ苦手なようだ。 初めての笑顔 (もう一回、笑ってください。) (・・・・・二度とするか。) ******* 意味わからなーい← そして無駄にながーい。 長編なみの長さですね← お付き合いください、ありがとうございました! → |