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04



「きゃはははっ!凄いよ女神様、さすが!」


だが、頭上からそんな声が響き、優は神器を横に構える。一瞬遅れて凄まじい衝撃と共にルカが降ってきた。


「うーん…無傷のまま連れていくのは難しいかなぁー」

「誰が…連れていかれるかよ!」


ルカが僅かに怯んだ隙をついて優は神器を横に払う。発生した炎蛇を、だがルカは必要最低限の動作で上空に飛んで回避した。


「イザヤにも言って!あたしは絶対にあんた達のところに行かないから!」


はっきり告げた優にも、ルカは唇を三日月形に吊り上げただけだった。


「駄目だって言ってるよね、女神様」


相変わらずルカは信念を曲げない。


「そうしないと、あたし達覚醒した意味ないもん」


視線を青くなり始めた空に移し、ルカは腕を組んで不思議そうに首を傾げた。


「うーん…どーしてかなぁ。イザヤは女神は覚醒したって言ってたのに…絶対おかしいよねぇ」


独り言を呟くルカの菫色の瞳が再び優を捉えた。


「ねぇ女神様。どこまで思い出してんの?」

「どこまで、って──」

「あたし達始祖の事は、覚えてる?」


その言葉に優はわななくように頷いた。


「…覚えてる。女神としての役割も、始祖の事も」

「…じゃあ、もう覚醒してるって事だよねぇ。じゃあ、何が足りないのかなぁー」

「おいおい、お嬢ちゃん。なに自分の世界に入り込んでんだよ」


うんざりげなエドガーの声に、ルカの瞳が煩わしそうに移された。


「ちょっと、おっさんには関係ないでしょ?邪魔だから黙っててくんない?つか寧ろ消えろ」

「つれねぇなぁ。襲い掛かってきて流石にそれはないんじゃねぇの?」

「ルカ。あたしはちゃんと全部覚えてる。その上で、あたしはみんなといるの」


はっきり告げた優に、ルカの目が不可解げに細められた。


「それって女神様の意思?」

「…あたしの意思よ」

「──ふうん」


次の瞬間、何故かルカの口元が歪んだ。


「ほんっと、今回の女神様って我侭だよねぇ」


彼女の瞳に狂気の色が宿ったのを優は確かに見た。


「…いや、今回の女神様もか。何度も何度も、そうやってあたし達の意見を無視する。人間というものを信じる。──はっ、バッカみたい。あの時、どんな屈辱を受けたのか忘れちゃったの?」

「あたしが人間だから人間を信じる。それ意外に理由がいるの?」

「違うよ。あんたは人間なんかじゃない。女神でしょ?」


切り捨てるようにルカは言い放つ。瞳に冷たい狡猾な色を宿したまま。


「ねぇ女神様。だったら、何度も何度も転生を繰り返していくうちにあんたは人を見定める事が出来た?」


挑戦的な口調で尋ねてきたルカにも優は動じない。真っ直ぐルカを見据える瞳は一切揺るがなかった。


「人を見定め、この世界の導き方を決める事が出来た?」

「…」


朝の静寂の中で、優は無言のままそっと神器を下ろした。


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