02
「グッモーニン、アーヴィング所長」
「貴様は勤務中に何を眠りこけている!しかも分かっているのか、貴様が今土足で引いているその書類は、今後大統領に見て頂く重要な書類なのだぞ!?」
「わーってますって」
茶色の短髪を掻き毟りながら、エドガーは緊張感の無い大あくびをした。
「…あ?てか所長、何で今の時間こんなとこにいんスか。今日は国防総省から召喚の要請が下ってたんじゃなかったっけ」
だから昼寝してたのに、と続けて小さく呟く。
「それはまた後日に変更になった」
「…………ちっ。まじかよ」
「──ロックウェル!!」
再び飛んだ叱責に、エドガーは目を細めた。
「貴様の勤務態度に関して私は言いたい事が山ほどあるのだぞ!?勤務時間内だというのに平気でサボる、態度は極めて横柄、怠惰!──あと、ここは禁煙だと何度言えば分かる!」
新たに煙草に火を点けようとしたところを奪われても、エドガーは表情一つ変えない。
「いいじゃないスか。俺の精神安定剤なんだし」
「精神を安定させたいのは私の方だ!」
「所長。あんま怒ると血圧上がりますよ」
「怒らせているのは貴様だろうがぁ!!」
「しょ、所長…!抑えて下さい!」
掴みかかろうとしたところを他の研究員に抑えられる。
何人もの研究員に抑えられたまま、肩で息をしながらアーヴィングはエドガーを睨みつけた。
「…ならば、ロックウェル」
「なんスか」
「今から私の言う事をよくきけ。──いいか、あともう数十分程度で付近の港に客船が到着する。西欧諸国からの船だ。話によると、何でも動力室の損傷により近郊の港に寄港しなければならないという事らしいが…便宜上という場合もある。その客船の様子を探り、怪しい船舶ならば連絡を入れろ。私はその旨を大統領に伝える」
「何で俺がンな事…」
「少しは従え!さもなければ減給だ!」
「…あーはいはい、了解」
大あくびと共に立ち上がり、皺のよった白衣を直すと、エドガーはいかにもだるそうに出ていった。
白衣の背中が消えると同時、アーヴィングは舌を鳴らす。
「……相変わらずなめくさった男だ。くそ…何故大統領閣下はあいつのクビを言い渡さない」
「仕方ありませんよ、所長」
低く唸るアーヴィングに、別の研究員が苦笑を漏らす。
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