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05



「アジアンの女の子…それに、異端審問官もこちらにいらっしゃいますわよね?火急の用件がありますの」

「…イヴ!?」


飛び出してきたシンに、イヴと呼ばれた女性はハッとしたかと思うと、みるみるうちに顔を喜色に輝かせた。


「シン!」


シンはイヴの格好を見て戸惑ったようだが、そんな彼に構う事なく、イヴはエドガーの脇をすり抜けると首に飛びつくようにして抱き付いた。


「よかった、シン…。ずっと連絡取れなかったから、もしかしたらって思ってたの。本当によかった…」

「…イヴ、あんた…生きていたのか」

「えぇ」


ぎゅっと、首に回された腕に力がこもる。


「だって私ね、」


イヴは美しい顔に笑みを浮かべると、細い指をゆっくりと彼の頬に這わせた。身を強張らせたシンにイヴは蠱惑的な笑みを深める。


「シンに逢うためなら何だってするもの。シンに触れてもらえるなら何も厭わない。ね?だから──」


そう言い、イヴは何事かと顔を覗かせている優に鋭い視線を向けた。


「──シンを惑わす女神を許さない」


え、と思った次の瞬間、イヴの周りを冷気が渦巻いたかと思うと、吹雪が牙を剥いて優達に襲いかかってきた。


「きゃあっ!!」


壁や天井、階段の手摺りが瞬く間に凍り付く。一番驚きの声を上げたのは当然この家の主であるエドガーだ。


「リネット!隠れておけ!」


キッチンにいる妻にそう声を張り上げ、エドガーは周囲の人民が騒ぎに気付く前に扉を閉めた。


「…なにすんの、あんた!」


辛くも回避した優は神器を発現させる。取り巻く炎が周囲の氷を怯えさせ、瞬く間に溶かしていく。だが、優の前の前に鋭い音を立てて槍が突き刺さり、そして先端から発生した冷気が再び周囲のものを凍り付かせていった。


「初めまして。“女神様”」


ぞっとする程凛とした声が降ってくる。


「そして、さようなら。二度と現れないで頂戴」


ひゅん、と槍が振り下ろされるが、優は刃でそれを防ぐと、そのまま後方に跳んで間合いから外れた地点に着地した。


「あんた…あの時のシスター!?」

「始祖として逢うのは初めてかしら?」


肩にかかる髪を払い、イヴは婉然と微笑んだ。


「初めまして。始祖が一人、イヴと申します」


始祖、と言う言葉に一番反応したのはシンだった。


「イヴ…」

「ふふっ、驚いた?シン」


悪戯が成功したような顔でイヴは嬉しげに、そして楽しげに笑っている。


「ねぇシン?どうしてそんなに困惑しているの?どうしてそんなに青ざめているの?私が始祖だったから?それともそれに気付かなかった自分に?」


愉快そうにイヴの碧眼が細められる。


「でも大丈夫、安心して頂戴。だって始祖と神器は同じ──同一で同等の存在だもの。私と神器は文字通り一心同体。私が神器であり、神器が私。完全に同調している二つの間には歪みも何も生じない。あなたが気付かなかったのは仕方ないのよ?」


物語を語るような口調で一気に語り、何が可笑しいのかイヴはくすくすと笑っている。


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あきゅろす。
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