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02



「お宅らを捜してるのは薔薇十字団だろ?だったら可能性が一番高いのは薔薇十字団だ」

「下らない憶測で言うな」

「だったら他に何の可能性がある?」


焼きたてのアップルパイを置きながら言ったエドガーの声にシンの眼が益々眇められる。
諭すように、アナスタシアが口を挟んだ。


「エドガー。私達を捜しているのは確かに薔薇十字団ですわ。けれど彼らな筈がありません。薔薇十字団が機械を使うわけがありませんもの」

「じゃあ他の可能性を言えるか?」

「それは…──」


答えを詰まらせたアナスタシアに、エドガーは脱いだ白衣をハンガーにかけながら口を開いた。


「考えられる事態は予測しておいた方がいいぜ。──まっ、そこの異端審問官さんはどうも納得いかねぇみたいだけど」

「………」


睨み上げてきたシンにもエドガーは動じない。


「そんな怖い顔すんなって。俺の下んねぇ憶測だろ、異端審問官さん?」

「俺はシンだ。あんたに異端審問官って呼ばれると虫唾が走る。二度と呼ぶな」

「…シン?──…ふうん、そりゃまた随分な名前だな」


その言葉にシンは不可解そうに眉を顰めさせたが、エドガーは自分のカップに注いだコーヒーに口付けていて、気付いた風はなかった。


「?」


その時、優の目は戸棚の上にある一つの小さな額縁に止まった。

それは一枚の写真だった。

抜けるような青空のもと、丘の上で女の子を挟んだ男女二人が穏やかにこちらに微笑みかけている。そして、その女の子の手を握って穏やかに笑っている男性は、白衣は着ていないが紛れもなくエドガーだった。


「アイヤー!これ、エドガーの家族写真アルか?」


メイファが優の後ろから身を乗り出してくる。


「そうだぞー」

「この子、エドガーと奥さんの子供アルか?可愛いヨ」


無邪気に言うメイファの手元を改めて優も覗き見た。
エドガーとリネットの手を握り、両親に挟まれて少女は弾けるような笑顔を浮かべている。それこそ、こちらに笑い声が聞こえてきそうな程の満面の笑みだ。

両親と同じ栗色の髪はツインテールにされ、短めの前髪の下で愛らしいであろう瞳は楽しそうに細められている。


「まぁ本当…。可愛らしい女の子ですわね」

「うちと同い年くらいネ。うちこの子に会ってみたいヨー」

「悪いなー、もうそいついねぇんだわ」

「え……、」


言葉を失った優達を気にする事もなく、エドガーはコーヒーを飲んだ。


「ま、そんな事より──」


コーヒーを置きつつ、エドガーは話題を切り替えた。


「俺もちょっと尋ねさせてもらうぜ?優だったな。お前さん、一体何者なんだ?」


その言葉に優ははっきりと身を硬くした。


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