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01



「お疲れさーん。着いたぜー」

「…も、もう無理………」


エドガーの声に優は庭先の通りに崩れ落ちた。

結構な距離を走ったというのにシンやアナスタシアは一切息を切らしていない。へたり込んだ優の横で、メイファに至っては通りの真ん中で大の字になって息を整えるのに必死なようだ。


「まぁ、二人とも。人が来ますわよ」

「わ、分かってるんだけど…、膝が笑って立てない…」

「おいおい、若いもんが情けねぇなぁ」

「な、なんでエドガーまで平気そうアルか〜…」


アナスタシアの手を借りて、メイファは未だ肩で息をしながら立ち上がる。


「優、立ち上がれる?」

「ま、待って…まだ膝が笑ってる…」

「なさけねぇの」


頭上からそう声が降ってきたかと思うと、グローブに包まれたシンの手が差し出された。


「ほら、とっとと立てよ。まだ油断出来ねぇんだから」

「……」


優は暫くその手を凝視し、そして上目遣いでシンを睨むように見上げると、渋々ながらも手を伸ばした。


「どーも、あんがとっ」

ぶっきらぼうに言い、立ち上がるや否や露骨にその手を放した。


「まっ、遠慮せず入りな。事前に連絡入れてねぇけど…ま、いっか」


エドガーの背中を追って優達は家の中に招かれる。玄関に入るなり、奥から香ばしい焼き菓子の香りが立ち込めてきて、皆の食欲を誘った。


「おーい。帰ったぞー」

「…あら?──エドガー、お帰りなさい。今日は随分早いのね」


リビングへと続く廊下の奥から駆けてきたのはエプロン姿の女性だった。女性に連れてこられたのか、香ばしい匂いが一層強くなる。


「ただいま、リネット」


柔らかく微笑み、優達の前だと言うのにエドガーは女性の頬に口付ける。その行為に「まぁ」と女性は困ったように笑うものの、決して咎めたりはしなかった。


「紹介しよう。俺の妻のリネットだ」

「初めまして、リネット・ロックウェルです。ちょうど良かった、今からお茶にしようと思ってアップルパイ焼いていたの。よかったら召し上がってね」


そう言って微笑んだ顔はとても嬉しそうだ。


「エドガー。お客様を応接間にお通しして。すぐに紅茶とアップルパイを持っていくわ」

「おう」


リネットはそのまま駆けていき、エドガーの案内で優達は応接間に通された。


「ま、適当に寛いでてくれ。リネットの手伝いしてくるわ」


エドガーはそう言って出て行き、優達は座り心地のよいソファに背を預けた。


「でもさっきのヘリ…一体なんだったのかしら…」

「分かんないよー」


背もたれにもたれかかって優は溜め息をつく。


「あたし達…合衆国に何かやった?」

「さっきのが合衆国とは限らないヨ?他の科学技術推進国の可能性だってあるネ」

「どっちにしろ分からない事だらけですわ。もしそうだったとしても私達が襲われる理由はありませんもの」

「──薔薇十字団じゃねぇのか?」


そうエドガーの声がしたかと思うと、紅茶と茶菓子を持って彼は入ってきた。
シンの目が眇められる。


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