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04



「優!メイファと一緒に乗客の方の避難を!」

「わかった!」

「きゃははっ!そーはいかないよ、女神様!」


アナスタシアの槍を受けたまま、ルカの周囲で急激に霊力が高まったかと思うと、禍々しいばかりの闇が彼女の周囲を取り巻いた。


「何が何でも連れてこいって言われてるからね!」


その瞬間、周囲の闇がスパークするように弾けたかと思うと、それはさながら槍のように形状を変化させて背中を向けている優に襲い掛かった。


「優、危ないヨ!!」


乗客から悲鳴が上がる。
優は振り返ると、神器を横に構えて防御の態勢をとった。

闇色の槍がぶつかり、凄まじい衝撃が腕を走る。
吹き飛ばされそうになるのを足を踏ん張らせる事で耐え、神器から発生させた炎で瞬く間に闇を飲み込んだ。


「あーあ。無理だったかぁー」


アナスタシアの槍を弾いて、ルカはふわりと後方に着地する。
その間、メイファは乗客をフロアから逃がして、空間には優達とルカだけが取り残された。


「ねぇねぇ女神様ー」


甘ったるい声で呼ばれ、優はゆっくりと視線を上げた。
ルカは笑っている。


「もう女神としての意識は覚醒しちゃったんでしょ?なのに何でこんな連中とつるんじゃってんの?あたし達を率いて、その上で行う女神としての役割…全部覚えてんでしょー?」

「………」


優は何も答えない。
構わずルカは続けた。


「あんたが女神としての役割を全うしなきゃ、覚醒したあたし達も気の毒だと思わない?」

「随分と恩着せがましい言い方だな、お前」


吐き捨てたシンにルカの瞳に狡猾な光が宿った。
にやりと口角が持ち上げられる。


「“紛い者"に言われたくないっつーの」


その言葉にシンは顔を上げた。
だが、彼女の幼い横顔はもう何も語らず、黙りこくった優を面白そうに見ていた。


「ちょっとー。何とか言ったらどーなのー?」

「……覚えてるよ」


ややあって優はそう答えた。


「覚えてる。女神の役割も、始祖の事も」

「きゃははっ!さすが女神様!」


嬉しそうに言ってルカは一歩踏み出した。
優は動かない。
進むことも退くこともしない。


「イザヤが待ってるよ?ほら、早く行こう」


小さな手が差し出されるが、優は決してそれを取ろうとはしなかった。


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