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03


そして、地に着地したシンは攻撃を仕掛けてきた人物を見るなりその碧眼を大きく見開いた。


「──あーあ、当たらなかったかぁー」


そこにいたのは、嘗て廃墟化した神殿で対峙したあの少女だった。


「こんにちはぁー皆さん。始祖が一人、ルカちゃんでーす」


手を上げて言いのけた少女の言葉に優達の顔色が変わる。
その反応に気をよくした少女──ルカは嬉々として得物を回転させ、そして菫色の瞳が優を捉えた途端、彼女の口角がゆっくりと持ち上げられた。


「───女神様。見ーっけ」


そして次の瞬間、掻き消えたルカの姿は一瞬にして優の眼前に現れた。


「!!」


慌てて神器を発現させたものの、衝撃によって優の体は吹き飛ばされ、倒れたテーブルにぶち当たった。
船客から悲鳴が上がる。


「優!」

「だ…っ大丈夫…」


鈍痛を堪えつつ、メイファの声になんとかそう答える。
その正面にニーソックスに覆われた細い足が降りてきて、優は身を硬くした。

頭上から楽しげな声が降ってきた。


「こんなとこでいつまで油売っちゃってんの?イザヤにあんたが必要なんだよ。ほら、行こうよ女神様」

「…誰が、行くかよっ!」


立ち上がりざまに神器を振るう。
ルカは軽々とそれをバックステップで回避し、そして陽炎を周囲に纏わしている優の姿に、ひゅうっと口笛を鳴らした。


「力は健在、っと」


何処となく嬉しげに呟いたルカの周囲を、武器を手にしたシン達が取り囲む。
じりじりと詰めてくる彼らにルカは決して動じず、ただ視線を静かに巡らした。


「やだなぁ。何マジになっちゃってんの、きもーい」

「あんたが帰ればすむ事ネ!早くどっか行くアル!」

「ぷっ…きゃははっ!ちょっと、あんたのその訛りなに!?超ウケるんですけど!」

「はああ!?今何て言ったアル!?もういっぺん言うネ!」

「大丈夫メイファ!あたし、あんたのその喋り方好きだよ!」

「私もですわ!可愛らしくていいじゃありませんの!」

「…話ずれてないか、お前ら」


優とアナスタシアのフォローもシンの冷静なツッコミも、今のメイファには届いていない。

一頻り笑ったルカは──それでも未だ笑いながら──くるりと得物を回転させた。


「邪魔しないでくんない?目的は女神様だけだから、邪魔立てしなかったら殺さないではいてやるよ?」

「冗談。なにがなんだか分かりませんが、あなたの方こそ退いた方がよろしくてよ」

「きゃははっ!嫌に決まってんでしょ!」


床を蹴ってルカはアナスタシアに踊りかかるが、彼女は一瞬にして折り畳み式の槍を展開させると、軽々とその攻撃を防御した。
二人の間で激しく火花が散る。


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