02 それは他愛もない話や、趣味、特技や出身国の事など、とにかく機会があればアナスタシアは優に話し掛けてくれた。 一人でいるとつい塞ぎ込んでしまいがちだった最近の優にとって、それは非常に有り難かった。 メイファも相変わらず優と一緒にいて、そんな彼女達に救われている事に優は気付いていた。 そして── 「シン。おはようございます」 「ああ。おはよう」 シンは相変わらずの調子で。 彼が弱さを見せたのはあの一瞬だけで、それからの彼は一切の動揺を見せなかった。 だからこそ優も動揺を晒す事をしなかった。 シンの平静を崩さない態度は優の中である種の枷と化していた。 だから─── (強くならなきゃ) それがせめてもの罪滅ぼしになるといい。 「いただきますっ!」 高らかに宣言し、優は無遠慮にフォークをウインナーに突き刺すと、肉汁が迸る程ジューシーなそれを一口で食べた。 「アイヤー!優、そんなにお腹空いてたアルか」 「まぁね。あと、これからに備えてエネルギー蓄えてんのっ」 そう言って優はパンにマーガリンを塗る。 そんな優の前方でアナスタシアは感服したように微笑んだ。 「ふふっ。腹が減っては戦は出来ませんものね」 「うちも優見習うアル!食べて食べて食べまくるヨ!」 メイファがフォークを振りかざしたその時だった。 不意に窓の外に巨大な陰りが落ちたかと思うと、轟音と共に船体が大きく揺れた。 「きゃあっ!!」 衝撃でテーブルの上に並べられていた食べ物が床に落ちては無残に潰れる。 「なんだっ!?」 シンが窓を開け放つも、ここからはちょうど船首の影になっていて何も確認出来ない。 続いて、先程よりも遥かに凄まじい衝撃が船体を揺るがし、室内にいた乗客は一斉にパニックに陥った。 「なんですの、一体!?」 「海賊アルか!?」 「…!──シン!」 「!」 優の声に、シンは反射的に神器を発現させ、防御の姿勢を取った。 一瞬遅れて凄まじい衝撃が剣にぶつかり、シンはそれを弾き返すと後方に跳んだ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |