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01



窓から射し込んでくる光と、いつもとは違うシーツの感触に優は深い眠りから覚醒した。

唸りながらのっそりと体を起こし、見たこともない室内に暫く思考はついてこなかったが、やっと今日までの状況を思い出して、そっか、と掠れた声で呟いた。

今、優達は旅客船の中にいる。

イザヤを追うという形でフランスを後にし、今別大陸に向かっている途中なのだ。

彼が何処にいるのか皆目見当すらつかないのが現状であるが、シンが言うには「優のいる所に絶対にイザヤは現れる」との事らしい。
彼は敢えてその理由を話さなかったが、大体察しはついていた。


「…女神………」


言葉にしてみても、やはりそれは現実味を帯びない。


「………」


と、また思考が暗い方に向かっているのを悟り、優は気を引き締めるように頬を叩いた。


(…悩むな、悩むな!)




──女神だからって何も気にする必要ない。



その考えに引っ掛かりは感じつつも、制服に着替え、何気なしに携帯を開いた。


『不在着信 八件』


ディスプレイに表示されている文字に息を呑む。
ボタンを押して着信履歴を見、溜め息をついて携帯を閉じると、カーディガンのポケットにつつきこんだ。


(あと一週間くらいなら、大丈夫だよね…)


その時、扉がノックされて、未だ眠そうなメイファと共にアナスタシアが入ってきた。


「優、朝ご飯食べに行きましょう?シンももう起きてるみたいだから」


「あ…、う、うんっ」


鍵を閉め、優達は通路を進んでいく。


「ねぇ優。優、きれいなピアスをしていますのね」

「ああ、これ?これね、フランスで買ったんだよ。アンティークショップで一目惚れしちゃったの」

「素敵なデザインですわ」

「優、その時衝動買いばっかしてたアル!手当たり次第のアクセサリー掴んでたの見たネ!」

「…ちょ、ちょっと、メイファ!?」

「まぁ…凄いんですのねぇ…」


アナスタシアは感嘆の溜め息を漏らす。


「でも、優うちにも買ってくれたヨ。ほら、今日から髪飾りこれにするアル!」


そう言って、メイファは得意げに頭を指差した。
二つに結われたお団子の近くで可愛らしい形の髪飾りが揺れている。


「あ、メイファつけてくれたんだ」

「一人じゃ出来なかったからアナスタシアがつけてくれたヨ!」

「素敵なデザインですもの。ねっ、今度そのお店に案内して下さらない?みんなで一緒に買い物に行きましょう?」


メイファの髪飾りをちょいちょいと直しながらアナスタシアはそんな事を言い、優は笑った。

こんな調子で、フランスを離れてからアナスタシアはことある事に優に話し掛けてくれる。


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