05
「シン、イザヤを捜しましょう。彼はきっと何かを知っていますわ」
「………」
その言葉にシンは暫く思案に暮れ、そして、そうだな、と呟いた。
「でも、アナスタシア。あんたはいいのか?あんたは皇帝からの勅命で薔薇十字団に遣わされているんだ。なのに…」
「まぁ。気遣って下さりますの?」
「い、いや、別にそういうんじゃ…」
両手を合わせ、アナスタシアは嬉しそうに笑った。
「やっぱりシンって優しいですわね。だけど、旨はもう陛下には伝えていますから安心して下さいませ。私も暫くは皆と一緒に行動させてもらいますわ」
「そうか。………悪いな」
「いいえ。これからよろしくお願い致します。──メイファ。あなたはどうしますの?」
「当然ついてくヨ!」
間髪入れず、メイファは答えた。
「うち、ずっと行くアル!優と約束したネ、うちらずっと友達だって」
その時、扉が音をたてて開き、振り向いた先に立っていたのは優であった。
「優!!」
駆け寄り、メイファは飛びつく。
「優。もう平気ですの?」
「うん」
メイファの頭を撫でながら、優は腫れた目でアナスタシアを見た。
「あのね、ちょっとシンと二人っきりにしてほしいの。ごめんけど、お願い出来るかな?」
シンがこちらを見た視線を感じたが、優はそれに気付かない振りをした。
意図を汲み、アナスタシアは頷く。
「分かりましたわ。終わったら呼んで下さいね」
メイファを連れて行き、アナスタシアは出て行く。
扉が閉まると同時に、優はシンの座っているソファの向かい側に腰掛けた。
「…なんか用かよ」
そう言ったシンの表情からは何も読み取れない。
生唾を飲み、意を決して優は口を開いた。
「その…、──…ごめんなさい…」
「………」
「謝ってすむ事じゃないのは分かってるんだけど…、でも………ごめんなさい…」
頭を深々と下げる。
どんな罵倒を、暴力を浴びようとも構わない。
ぎゅっと目を閉じ、優は体を硬くしてシンの行動を待った。
「………」
シンは黙ったままだった。
それが余計に優を追い詰める。
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