04
「安心しましたわ。よかったですわね、メイファ」
「うん。うち、すごい心配したヨ」
「…ん、ごめん」
紅茶の入ったカップが手渡され、シンは無言で口づけた。
甘い香りが口内に広がり、ささくれ立っていた気持ちを落ち着かせていく。
「優も目覚めているのでしょう?」
「…ああ」
「まだあまり気分よくないのかしら…。薬、渡しておいた方がいいかしら」
「今はやめといた方がいい」
「………そうですわね」
アナスタシアは溜め息をつき、シンの向かいに腰を下ろした。
「シン。これからどうするんですの?」
「どうするもなにも何も出来ない。枢機卿も全滅が確定しているし、教団自体も事実上消滅したんだ……くそっ」
強く唇を噛み締め、シンは顔を隠すように強く前髪を掴んで黙り込んでしまった。
重苦しい静寂が降りる中、アナスタシアは無言のままカップに口付け、横でクッキーを食べているメイファを見た。
「メイファ。あなたは気付いていたの?優が女神だって事を…」
カップに口づけたままメイファは頷く。
「でも、女神って考えはなかったアル。ただ、優は特殊なんだって事だけは分かってたヨ。イザヤだって優には…──」
「………イザヤ…?」
不意にシンは呟いた。
ゆっくりと上げられたその顔は、ありありと困惑の色が浮かんでいる。
「………そうだ、どうしてあいつはそれに気付いていたんだ?あいつ、一体…」
「イザヤだけじゃないヨ。ほら、きっとあれもネ。前にシンが任務で行った所にいた女の子も、意味深な発言ばっかり残してたアル」
「くそっ、なんなんだよ一体……」
「そのイザヤは今は?」
「分からない。消えたんだ、あれから」
「そう……」
アナスタシアは紅茶を飲み干し、決心したようにシンを見た。
「シン。この地を離れましょう」
「…離れてどうするんだ」
「それはまだ分かりませんわ。だけど、このままここにとどまるのは優にも良くありませんし、シンも辛いでしょう?」
「………」
肯定も否定もせず重く押し黙ったままのシンに、アナスタシアは続けた。
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