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白い。



真っ白な光が周囲を呑み込んでいく。
人が、街が、空間が、世界が光に呑み込まれていく。
全てが光と共に消滅していく。



世界が壊れていく。



(やめて──)



光の中に、シンとメイファの姿が浮かび上がる。
優は必死に手を伸ばした。
だが、その伸ばされた手から放出された光が瞬く間に二人の体を呑み込み、溶けるように消えていった。

声にならない悲鳴が喉から迸る。



(やめて…──!)



空間がぐにゃりと歪み、足元が崩れていく。



嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ───!



崩れた足元の下から新たな眩しい白い光が現れ、優は為す術もなく呑み込まれた。










「──嫌あぁぁぁぁぁあ!!!!」










「───!!」


目の前に広がる見覚えのある天井。
荒い息を吐きながら、優はここが自分が宿泊していたパリ市内のホテルである事を悟る。


(あ…あたし……?)


服は寝間着に着替えさせられていて、額には固く絞られたタオルがのせられていた。

あの時、自分はイザヤと薔薇十字団にいた筈だ。
混乱する思考をフルに回転させ、優は状況を整理しようとした。

その時、扉が音を立てて開かれ、メイファと共に見覚えのない女性が買い物袋を掲げて帰ってきた。


「───優!!」


歓喜の声を上げ、メイファは飛びついてくる。
一緒にいた女性はその様子に苦笑しながら、買い物袋の中から果物を取り出した。


「ほら、メイファ。優はまだ弱ってるんだから、あまり無理させてはなりませんわ」

「だってうち、優このまま目覚めないんじゃないかと思ってたヨ〜!」


メイファに抱きつかれたまま、優は女性を見た。


「あの…あなたは?」

「アナスタシア・ケレンスカヤと申します。ロシア帝国より使者として、シンと共に薔薇十字団に向かう途中でしたの」

「そうだ!シンは!?」


アナスタシアは静かにするように口元に人差し指を当て、ベッドの奥にあるソファを指し示した。


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あきゅろす。
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