06(終)
「私としては、そこから私に話の矛先が向いてくるのはどうも不自然だと思いますけどね」
「シンと司祭イザヤって似てるよねって話にもなったから」
更に嘘を重ねる。
成る程、とイザヤはカフェオレの入ったカップを持ち上げた。
「まあ、シンが私に似ているのは無理もない話ですけどね」
えっ、と思って頬杖をついたまま優はイザヤを見たが、彼はカフェオレを飲んでいて優の視線はきれいに無視された。
「兄弟とかじゃないって、前イザヤ言ったヨ?」
今まで黙っていたメイファが口を開く。
イザヤは頷いた。
「ええ、兄弟ではありません」
「そんなに似てるのに?」
「お言葉ですが、あなた達が気にする必要はありませんよ」
「………」
「そうだよね。ごめんね」
黙ったメイファの代わりに優が謝罪を口にする。
イザヤは、いえ、と言って微笑み、カップに口付けた。
「仮面、邪魔じゃないの?」
「外では常に装着しているのが規則ですからね。そんな事は思った事はありませんよ。職業柄人に恨まれる事もありますし、顔を隠しておくと何かと便利なんです」
「ふうん…」
ウェイトレスによってセットが運ばれてくる。
メイファがパンケーキに手を付けるのを見ながら、優はトーストにマーガリンを塗り「早く帰りたいなぁ…」とぼんやりと考えた。
「さて…。では私はそろそろ教団に戻るとしますか」
立ち上がり、イザヤは一人分よりも明らかに多い金額の札を伝票の上に置いた。
「ちょ、これ…」
「これで支払いをすませておいて下さい。少々のんびりしすぎたみたいなので…」
「いいよ、こっちの分はあたしが払うから」
「お気になさらず」
財布を取り出した優の手を押し返し、イザヤはそっと優の耳元に唇を寄せた。
「七日後、薔薇十字団にいらして下さい。…真実をお教えしましょう」
「!」
優の顔色がさっと変わったが、イザヤは何事もなかったかのように踵を返すと、黒衣を翻して立ち去っていった。
メイファが安堵の息をつく。
「…イザヤ、何考えてるのかさっぱり分からないアル。ちょっと怖いヨ。ねえ優?」
「………」
「優?」
「……へっ?──ああ、ごめんごめん!ちょっとぼけーっとしてた」
あはは、と渇いた笑いを上げる優をメイファは不安げな表情で見上げた。
「大丈夫アルか?」
「なに言ってんの!大丈夫に決まってんでしょ。ほら、はやく食べてホテル帰ろうよ。帰ったらその足で買い物行こっ」
「買い物!?行きたいアル!」
「じゃあ早く食べなよ」
「うん!」
満面の笑みで返事をし、急いでパンケーキを口に運ぶその姿に笑いながら、優は机の下で握った拳を強く握り締めた。
to be continued...
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