05(終)
周囲に目を配って、優は初めて今自分がどこにいるのかを確認出来た。
遊具もなく中央に噴水しかないこの公園は、初めてシンと会った場所だ。
(シン……)
視界がぼんやりと霞む。
やばい、泣く──優はごしごしと慌てて目元を拭った。
気付いてしまった。
イザヤの言いたい事に。
彼の言う“真実”に。
違う、薄々感づいてはいたのだ。
ただ、それを認めたくなかっただけ。
あまりに非現実過ぎる事柄だったから。
けれど、魂がしきりに“真実”を伝えてくるのを、優はもう無視出来なかった。
「……、…っ」
胸を締め付けられるような感覚に、優はたまらず胸を押さえた。
ああ、ほら。
この間にも魂が悲鳴を上げている。
真実を確かめろと、体の奥底で何が囁く。
(どうしよう…)
一応心の中で呟いてみるけれど、言ってみるだけ無駄。
そんなもの、初めから決まりきっている。
「───優!!」
その時、後ろからメイファの声が届いてきて、優は反射的に振り向いた。
息を切らしながら駆けてきたメイファは息を整えるのに必死なようだ。
「よかったヨ、すぐ見付かって」
明るい笑顔を向けたメイファに優は再び泣きそうになった。
伝えなきゃ──強張る喉に無理矢理酸素を取り入れて声を発しようと思ったが、思いに反して優の喉は震えるばかりで声は出なかった。
「いいヨ」
「え……」
思わず顔を上げると、メイファはにっこり笑って、小さな手で優の手を取った。
「無理する必要ないアル」
「メイファ…」
「だって優今いっぱいいっぱいって顔してるもん」
呆然としている優を見上げるようにメイファはにまっと笑った。
「でも忘れちゃ嫌ヨ。うちら友達アル。うち、優の事大好きアル。優が何だろうが関係無いヨ、うちは優と友達アル。違うか?」
「…──メイファ!」
思わず優はメイファを強く抱き締めていた。
突然の事にメイファはわっと声を上げ、何事かと見てくる通行人にわたわたと視線を巡らした。
「ちょ…優!みんな見てるアル!」
「〜〜〜もう、だってメイファかっこよすぎ!」
「わ、わけわかんないヨ!当然の事言ったまでネ!」
優を引き剥がそうとするが、メイファは縋るように抱き留められた腕に込められた力に抵抗するのをやめた。
「……ありがとう、メイファ」
蚊の鳴くような小さな声だが、それでもはっきりと優は告げた。
(───確かめなきゃ)
彼に尋ねなければ。
全てを、真実を。
優はメイファの首に回したまま、ぐっと己の手の甲に爪を立てた。
to be continued....
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