04
「己の所業を、彼らの悪逆を、我らの意思を。かつて強く交わした約束は何年経とうと消えるものではない」
物語を語るような口調でそう言うと、イザヤは呆然としているメイファを穏やかな瞳で見下ろした。
「メイファ。危険な目に遭いたくなければ、悪い事は言いません、優と一緒にいるのはやめなさい」
その穏やかな口調とは裏腹、告げられたな内容にメイファは唖然とし、だがすぐに反論する事を思い出した。
「な…──なんでそんな事言うアルか!」
「あなたの身を案じているんですよ。もう一度言います、優と一緒にいるのはやめなさい」
「嫌ヨ!!」
躊躇う事なく、メイファは即答した。
「わけわかんないアル!なんでそんな事言われなきゃならない──!」
「メイファ」
強いイザヤの声にメイファは息を詰まらせた。
静寂の中、睨み合いが続く。
「私は忠告しているのです。死にたくはないでしょう?」
メイファは息を呑む。
「…、死……?」
「ええ、死です」
呆然と呟く事しか出来ないメイファに、シンは淡とその言葉の重みを感じさせない口調で返す。
「シンにも忠告を…──ああ、まぁそれはいいか」
メイファの前方で、イザヤは独り言のように呟いて周囲に視線を巡らした。
「…っ関係ないアル!!」
叫んだメイファにイザヤの視線が落とされる。
「優とうちは友達ヨ!イザヤに勝手な事言われる筋合いないネ!」
語尾荒く告げ、メイファは踵を返すと振り返る事なく廊下を飛び出していった。
イザヤはそんなメイファを追い掛けようとはせず、軽い溜め息をつくと同時に天井を仰いだ。
「──…馬鹿な子だ」
皮肉の混じったその呟きは、誰にも聞こえる事なく部屋に吸い込まれていった。
◇◇◇
逃げるように薔薇十字団本部から出てパリ市内を駆け抜けた優は、膝に手を置いて荒い息を吐いた。
「…、………はっ…」
呼吸を整えようとするがなかなか思うようにいかない。
詰まった喉に無理矢理空気を通し、優は大きく息をつくと額に滲んだ汗を拭って顔を上げた。
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