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02




◇◇◇



遠くで、悲鳴が聞こえた。



見上げれば真っ赤な空。
鮮やかな赤ではなく、地上の塵や埃にくすんで、どす黒く濁った赤だ。


そして、すぐ近くから争いを物語る激しい爆裂音が響いてくる。
轟く稲妻が虚空を裂き、地面が大きく唸りを上げ、烈風が沸き起こり、禍々しい闇が大地を更に黒く染め、水のないところに洪水が起きている。

それに呑まれては怨嗟の声と共に絶命していく人間達。
迸る鮮血が、汚れた大地を更に染め上げていく。

目の前で展開される殺戮劇。
剣を振るう。走る。飛ぶ。
炎。炎。炎。

凶刃が我が身を捕らえようと迫る。
払いのけるように腕を振るった。
湧き上がる業炎。
剣を握った目の前の人間が一瞬にして火柱に呑み込まれ、瞬く間に灰と化した。


『…ごめんなさい』


次々と迫る凶刃。
その度に業火が大地を走り、先程と同様に何人もの人間が瞬く間に灰燼になる。



痛い。
痛い痛い痛い痛い。



心が悲鳴を上げる。
気付いたら、頬を涙が伝っていた。



(───ああ、私は)



何故こんな事になったのだろう。

愛していた。
護りたかった。
助けたかった。
赦したかった。


汚れた大地。
私の愛した世界。
私が愛した世界。
私を愛してくれる筈だった世界。


稲妻が地面を走り、天から産み落とされる落雷。
人間達の悲鳴。肉の焼ける嫌な臭い。
地面で憐れにのたうち回る人間を踏みつけ、こちらに駆けてくる影。


(ああ)


守るように立ちはだかった影から次々と稲妻が発生する。
走る雷光。天を突き破るような雷。
周囲に降り注ぐ光はまさに神の裁きのよう。



───雷光。



愛していた。
護りたかった。
助けたかった。
赦したかった。



その背中に手を伸ばす。



だから。
だから───

















は、と目が覚めた。



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あきゅろす。
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