07(終)
(別の反応なんてなかったのに…!)
動揺の色を滲ませた優を見て少女は腹を抱えて笑った。
「きゃはははっ!情けなさすぎ!あんたマジでそんなんでいいの!?」
くるりと得物を回転させる。
「あいつもさ、なんでずっと想ってるのか分かんない!ただ縛られてるだけなのに、それにも気付かないなんてほんっと可哀想!」
「……は?」
優を見たまま、少女は目を眇めさせる。
「あいつもね、必死なんだって。やっと見付けた、愛しくて愛しくてたまらないもの。あの時無理矢理奪われて、それからずっとずっとずっとずっと捜し続けて──それでやっと見付けたんだよ」
「ちょ……さっきから何の話──」
優は引き寄せられるように前へ進んだが、少女は語るのをやめなかった。
「あたしは正直どうでもいいんだけど、あいつといる方があのおっさんよりも楽しいもんね!」
少女はゆっくりとシンに視線を移す。
「あんたもさあ、何の違和感も感じないわけ?」
「…何をだよ」
「あっ、そーかそーか。あんたが感じるわけないか。所詮あんたは違うんだし」
「…だから、何の話だっつってんだよ!」
吼えたシンにも少女は動じない。
「教えてばっかじゃつまんないから教えないよ。ちょっとは自分で考えろっつーの」
少女は薙ぐように武器を振るった。
彼女の周りを取り囲むように闇色をした奔流が渦を巻く。
「じゃっ、あたしもう帰るね。きゃははっ、今日は報告したい事沢山出来ちゃった!あいつ超喜ぶよ!」
その瞬間、スパークするように闇は四方に飛び散って優達を呑み込んだ。
悲鳴が上がる。
闇が収まったのを感じて恐る恐る目を開けると、もうそこには誰もいなかった。
神殿に侵入した時と同じように、奇妙な静寂が横たわるばかりであった。
「…結局、持ってかれちゃったアル」
メイファは呟いたが、優もシンも何も言えなかった。
(あたし…───)
じわりと手に嫌な汗が浮かぶ。
不自然に早まる鼓動を感じながら、優は知らずのうちに唇を強く噛み締めていた。
「…二人とも、大丈夫アルか?」
不安げなメイファに優は頷いたが、心の中に潜む不安は決して拭われなかった。
“どくん”
優の体の奥底で、“何か”が大きく脈打った──。
to be continued...
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