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06



「はあ〜?意味わかんない、あたし頼まれて取りに来ただけなんですけど」

「それが何なのか分かってるのか!?」

「とーぜん」


少女は笑いながら半透明の物質を投げて遊んでいる。


「神器でしょ?それくらい知ってるっつーの」

「…今すぐそれを渡せ。預言者クレールより任務を言付かっているんだ」

「クレールから?──…なーるほどねぇ、そーいう事かぁ、ふふ…ふふふふ……」


少女の笑い声は最初は小さなものであったが、次第に大きくなり、聖堂全体に木霊した。
何がおかしいのか腹を抱えて笑い転げる少女の姿に優は呆気に取られた。


「きゃはははっ!あ…んの男もまどろっこしい真似するねー!くくっ…やばい、ちょーウケる……!」


未だ笑みの含んだ表情のまま少女は優達を見た。


「だったら尚更だーめ。先に見付けたのもあたしだし、あたしが貰ってくのも自然の摂理ってやつでしょ?」

「駄目だ。神器は俺達薔薇十字団が徹底的に保護すべき物質だ」


シンは神器を体現化させると中段に構えた。


「シン!さっき殺しは御法度だって──!」

「勘違いするな。強行手段に出るだけだ」

「…神器、渡さなかったらいいアルね?」


メイファも腰を落とし、臨戦態勢を調える。


「ああ。頼む」


次々と臨戦態勢に入る二人に、優も観念した風に拳を合わせた。
炎を纏った神器が一気に出現する。
それを見て目の前に佇む少女は、獲物を見付けた獣のように瞳をぎらつかせた。


「きゃははっ!ついてる、あたしってば超ついてる!帰ったら報告しなくちゃあ!」


一瞬にして少女の姿が掻き消え、目を配らせた優は頭上に一つの影が躍り出た事を悟って神器を突き出した。
一瞬遅れて鋭い刃が刀身にぶつかる。


「いい勘してんじゃーん!」

「!」


くるりとそのまま体を回転させ、少女は降り立つ。
一見トンファーのようなそれではあるが、トンファーにしては有り得ない巨大なその武器の刃は外側に大きく湾曲している。


「──…嘘、だろ……」


呆然と立ち尽くすシンのその顔には、はっきりと動揺の色が浮かんでいる。


「…どうしてお前が神器を持ってるんだ!!」


その声に、優は弾かれるように前を見た。

この部屋の中にある反応は一つ──つまりまだ誰も体現化していない状態のあの物質だけだったのだ。


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