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04



「メイファ?どうしたの?」

「?何が?ほらほら早く行くヨ、シンさっさと行っちゃったネ!」


メイファに手を引かれつつ、優は彼女の小さな背中を見ながらぼんやりと先程の言葉に思いを巡らしていた。

聞き間違いであってほしいが、優の耳には確かにこう聞こえたのだ。



『あの時、何人も殺したくせに』



と──。



「…………」



◇◇◇



数十分かけて優達は神殿の最深部に到達した。

造り自体は単純なものであったものの、通路を倒れた柱や瓦礫が塞いでいたので破壊しながら進まずをえなかったのだ。


「盗賊がいないのも納得ヨ〜。こんなん普通の力じゃ壊せないアル」

「そうだな」


シンの神器から青白い光が障害物目掛けて走り、目映い閃光と共に通路を塞いでいた柱を粉砕した。


「あっ、でもこれで最後みたい」


感じる波動も一歩進むごとにどんどん強さを増していっている。
散らばる瓦礫を飛び越え、優は開けた空間に出た。

そこはまるで別世界だった。

かつては聖堂として使われていたのだろう。
原形をとどめた巨大なステンドグラスからは西日が射し込み、七色の光を空間内に撒き散らしている。

長椅子は規則的に並べられたままで、中央に伸びる赤絨毯は埃一つかぶっておらず、瓦解しかけの本殿を除けばつい最近まで使われていたような錯覚に襲われた。


「凄い…」


高い天井を見上げ、優は感嘆の溜め息と共に呟いた。

だが次の瞬間、体の中を何か強い力が駆け抜けたのを感じ、優は弾かれたように視線を前方に向け──そして目を瞠らせた。

赤絨毯の伸びた先にそびえ立つ巨大なパイプオルガン。
その前方の台座に、一人の少女が背を向けて腰掛けていたのだ。


(こんなところに女の子…?)

「おい!こんなところで何をやっている!」


シンの声に、少女は今気付いたと言わんばかりの表情で振り返った。

短めに切り揃えられた前髪の下で、髪と同色の大きな紫色の瞳が優達を捉える。


「あっれれー?なんでこんなとこに人がいんの?」

「それはこっちのセリフだ。もう夜も近い、早く帰れ」


だが、少女はシンの声を聞き流し、よっと声をあげて台座の上に立ち上がった。
動きに合わせて、高めに括られたツインテールが揺れる。

肩を丸出しのドレスをあしらった服に未発達な体を包み、優達を見下ろす瞳には何処か揶揄の色が浮かんでいる。


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あきゅろす。
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