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02



「優!?」


崩れた優を慌ててメイファが支える。
メイファは何の異変も感じていないのだろう、優を見つめる瞳はただ不安げに揺れているだけで苦痛も何も見受けられない。


(なに、これ──)


額に脂汗を滲ませ、優は苦悶の顔を上げる。
その優の視界に、自分と同様、頭を押さえて膝をついているシンの姿が飛び込んできた。

シン、と叫ぼうとしたが、ひどい痛みにより声にならなかった。
光の波は緩やかに収まっていくと同時に頭痛も嘘のように緩和されていったが、不快感は最後まで消えなかった。


「……成る程」

「…っ、何を……」


優の問いに答えず、クレールは笑みを浮かべた。


「失礼した。客間を用意しておるから、今宵はどうぞそちらで休まれよ。──司祭シン」

「…はっ」

「司祭には新たな任務だ。ベルギーより不可解な魔力反応があるとの情報が入った。長年探し求めていた最後の神器やも知れぬ。その地に赴き、真偽の程を確かめよ」

「…、御心のままに」


頭を押さえたままシンは立ち上がると、優達を引き連れて壮麗な造りの扉を出た。


「二人共、大丈夫アルか?どうしたネ?」

「…メイファはなにもないの?頭痛いとか…」

「なんにも感じないヨ」

「メイファは感じなくて当然だ」


階段を下りながらシンは口を開く。


「あれは神器発現者にだけ効果がある術だ。…あの野郎──」


シンは周囲に誰もいない事を確認すると声を潜めた。


「いいか、絶対に油断するなよ。預言者クレールはお前が神器を所持している事に気付いている。何をされるか分からない」

「そんなに神器って大切なものなの?」

「本来なら全て教団が徹底的な管理下に置くべきものなんだ。預言者クレールの動向には用心しろ。あいつは信用ならない」

「確かに胡散臭いヨ、あのおっさん」

「口外するなよ。言われたくないだろうけど、お前らはアジアンって立場もあるんだから」

「うん…。──でもさ、シンって不思議だよね」

「?」


優の意図するところが分からず、シンは小首を傾げた。


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