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03



「口で言ってもわかんねえんなら、体に言うしかねえなあ!」


その瞬間、急激に周囲の温度が下がったかと思うと、室内を吹雪が吹き荒れた。

初めて体感する魔法の威力にメイファは悲鳴を上げ、優もやはり恐怖は感じたものの、怯む素振りは見せず再度炎を纏った長剣を振るった。

空間を裂くように炎が走り、爆発的に膨れ上がった熱風は発生した吹雪を、じゅわっという音と共に蒸発させ、そのまま男達の体を吹き飛ばした。


「が…っ!」

「アイヤー!優カッコいいアルー!」

「…っ、こ──んのクソがあ!」


無邪気に飛び跳ねているメイファの背後から、男はその手首を掴むと一気に上に引き上げた。


「!メイファ!?」

「剣を収めな女。でないと、こいつの内臓ぶちまけるぜ」


優は狼狽したが、掴まれた事により宙吊りになっているメイファは大して動じる事もなく、次の瞬間なんと思わぬ行動に出た。


「せーのっと!」

「ぐげっ!?」


渾身の力で男の腹を蹴り付け、力が緩んだ隙を見逃さずにメイファはするりとその拘束から逃れ、そして男の太い手首を掴んだかと思うとなんとその巨体を軽々と一本背負いしたのだ。


「………へっ?」


唖然としている優の前でメイファは手をぱんぱんと払い、そして無邪気な笑顔を見せた。


「心配ご無用ヨ。うち少林拳習ってたから」

「…………わお…」

「…っざけんじゃねえぞ!」


咆哮を上げ、男は優に飛び掛かる。
気付いた優は慌てて防御の姿勢を取るが、踏ん張りきれていない足では男のその鋭い一撃を受け止めきれず、為す術もなく膝から崩れ落ちた。

好機と見たか男は空気中の水分を凍らせて鋭い氷柱を形成させると、それを優の額に向かって振りかざした。

優の瞳に恐怖が浮かぶ。
だが──


「!」


横から滑り込んできた漆黒の影によって、男の氷柱は粉々に打ち砕かれた。


「!シン!?」


影はまさしくそれだった。


「……っ優、てめえ後で覚えてろよ。人の事臆病者呼ばわりしやがって」

「な、なにそれ、根に持たないでよ!ちっさい男!」

「うるせえ!下がれ、邪魔だ!」


優が飛び退いたのを確認する事なく、シンはくるりと得物を回転させると、そのまま柄の先の飾りで男の鳩尾を強く打った。
短い悲鳴が上がる。


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