02
「関わるな」
「…どうして!」
「お前もアジアンだ。力でお前が敵うわけもないし、あいつらは少しなら魔法だって扱える。彼女の二の舞になるだけだ」
「そんなの……っ、…そうだ、だったらシンが助けてあげてよ!」
だが、シンは首を横に振り、優を青ざめさせた。
「私闘に第三者の立ち入りは教団内で禁止されている。破ったら罰則だ」
「私闘!?あれのどこがヨ!」
メイファも叫んだが、シンはその場を一切動こうとはしなかった。
「なによ、それ…」
ぎり、と優は奥歯を噛み締めた。
「………信じられない。罰が恐くて目の前で起きてる事見過ごすの?──いいよ、あたし行ってくる!」
制止を振りほどき、優は両手の拳をちょうど鞘から剣を引き抜くように当てると炎を纏った神器を体現化させた。
「なっ!?」
「アイヤー!優カッコいいヨ!」
一瞬にして神器を体現化させた事に目を剥いたシンを尻目に、メイファも飛び出した。
剣を横に構え、優は精神を高める。
次の瞬間、空気が一気に膨張したかと思うと、熱風と共に女性に覆い被さっていた男の巨体は軽々と吹き飛ばされ、倒れたテーブルに体を打ち付けた。
「な、何だあ!?」
一度はその顔の中に恐怖を浮かばせた男達であったが、攻撃を仕掛けてきたのが少女──しかもアジアンである事が判明すると、たちまちその顔の中に下卑た笑みを浮かべた。
「おいおい、まーだアジアンがいるぜ?」
「っあー…アジアンアジアンアジアンアジアン…。いい加減その呼び方ウザい」
「お姉さん、大丈夫アルか?」
メイファの声に女性は服の乱れを直して何度も頷き、脇目も振らずに店の外へと飛び出していった。
そんな中、シンは携帯を取り出すと画面に何も表示されていない事に舌を打った。
「……指令が来るまで、俺は手出しできないからな」
それでも、いつでも抜刀出来るようにシンは鯉口を切る。
「あー…ったくよお、アジアンってのはどうして無駄に威勢がいいんだあ?」
「考えもなしに突っ込んでくるのは馬鹿のやる事だぜ?」
「アジアン、アジアンってうるさいヨ!」
「アジアンをアジアンって言って何が悪いんだ?ここは西欧諸国、てめえら科学技術推進国の来るところじゃねえんだよ」
「そんな法律どこにもないでしょう」
言い放ち、優は神器を振るった。
炎が威嚇するように空間を切り裂く。
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