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「美味しい〜!」


パリ市内にあるカフェで、メイファは満面の笑みを浮かべて目の前にある巨大なパフェを平らげていた。


「うちパフェ初めて食べるネ、中華のデザートは専ら杏仁豆腐ヨ」

「メイファ。クリーム付いてるよ」

「はぁい」


メイファが口元のクリームを拭った、その時だった。

突如として店内から女性の悲鳴と野太い怒号が響き、それと同時に食器が落ちて割れる音が聞こえて、優は首を竦めた。


「な、なに──」

「喧嘩だよ」


大した事じゃない、と言いたげにシンはカップに口付ける。

周囲の客達は関わり合いにならぬよう外に出始め、気付いた時には店内に残っているのは優達と、喧嘩を物語る喧騒だけになっていた。

その時、物凄い勢いで食卓用のナイフが目の前を飛びすぎ、優は悲鳴を上げて首を竦めた。
どす、と鈍い音と共に、ほぼ水平に飛んだナイフは深々と木の柱に突き刺さった。


「──ざけやがって!」


そんな声が脳天を貫き、優はびくりと肩を震わせた。
何事かとメイファは首を巡らしているが、やはりシンだけは意に介した風もない。

そこには、大柄な二人組の男性がいた。
テーブルを蹴り飛ばし、その際に乗っていた食器やパンが散らばったが、彼らの意識はそこに向けられる事はなかった。

彼らの目の前には、従業員と思しき一人の女性がいた。
お盆を胸の前で持ち、黒い瞳に涙を浮かばせて、目の前の怒り狂う男達を上目遣いで睨んでいる。
その顔つきや髪の色は、明らかに西欧諸国の者ではない。


「アジアン…」


優が呟いたそれが、まさしく彼女のそれだった。


「てめぇらアジアンが運んできた飯なんか食えるかっつぅの!」

「別の奴に運んでこいって頼みな。その間、てめぇはここら辺の掃除でもしてろよ」

「…他の人は、みんないません」


震える声で、女性は告げる。


「…あ?あぁ、成る程なぁ。てめぇがいるからか」

「…あんた達が騒ぐからでしょう!?」


かなぐり捨てて叫んだ女性に、男達を取り巻く雰囲気がたちまちのうちにどす黒くなった。


「あんだとコラ!」

「…あーあ、気に入らねぇ。やっちまおうぜ」


男達に飛び掛かられ、女性の高い悲鳴が上がる。
いてもたっても入られず優は立ち上がったが、思いがけずそれはシンに制止された。


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あきゅろす。
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