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06



(地下の死体を片付けに行かんといけんな…)


夕闇の迫る聖堂。
クレールの説法を拝聴しようとあれだけの人で溢れていた堂内はしんと静まり返り、不気味な程だ。
耳鳴りがする程の静寂の中、クレールは一人踵を返して出入り口へと向かった──その時だった。

不意に目の前で扉が動き、クレールは思わず足を止めた。
観音開きの扉がゆっくりと開き、庭に面した外から燃えるような夕日が射し込んでくる。


(…預言者インメルマンか?)


何か忘れ物でもしたのだろうか。
姿を伺おうにも、突き刺さるような西日にクレールは思わず目を眇めた。


「御機嫌よう。預言者クレール」


涼やかな青年の声が響き、観音開きの扉がゆっくりと閉じていく。
徐々に細くなる西日にクレールはようやく前を見る事が出来、そして、目の前に立っている人物を見るなり、傍目にも分かる程青ざめた。


「な…何故…──」


ぎいい、と鈍い音を立てて扉が完全に閉じられる。
クレールは思わず後ずさった。


「…っ何故、生きて…──!」


目の前に──先程始末した筈の人間がいる。

一気に冷や汗が噴出し、大地の感覚さえ希薄になる。
青ざめて立ち尽くすクレールにイザヤは微笑んだ。


「先程はどうも」

「………っ」


理解できない事態にクレールは再度後ずさった。
イザヤは一歩一歩距離を詰めてくる。
表情は穏やかな微笑みなのに、異様な威圧感がクレールを襲った。

クレールが後ずさった分だけ、イザヤも前進する。


「撃ち抜いてくれたのが頭で助かりましたよ。衣服が汚れたら厄介ですからね」


まぁ下は後で洗わねばなりませんが。
などと言いながら、イザヤは更に距離を詰める。
絨毯の中ほどで、まだ充分に下がる事の出来る位置だというのに、遂にクレールの足が止まった。
一定の距離で対峙したまま、静寂の中睨み合いが続く。

空気が凝り固まったような膠着状態の中、先に動いたのはイザヤの方だった。
否、動いたと言っても、それはほんの少しの身じろぎにも似た所作であった。
だが、クレールにとって、それは大きな動作だった。


「───っ!!!」


拳銃を引き抜き、クレールは無我夢中で銃を乱射した。
聖堂内に銃声がいくつも反響する。
銃口を向けられたイザヤの体はその度に激しく舞い、それでもクレールは銃を乱射するのをやめなかった。

どのくらい経っただろう。
撃鉄が空回りをし始め、クレールは荒い息を吐きながら前を見た。

血潮が長椅子や床を彩り、汚れた赤絨毯の上。
幾つもの銃弾を受けて沈むイザヤの遺骸。
だが、クレールは今度は安堵しなかった。


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あきゅろす。
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