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07



「…逃げないで……っ」


優の声は震えていた。


「逃げなくていい…っ何も恥ずかしい事なんてない…!だから…っ!」


縋り付くその腕は震えている。
涙の感触が背中に伝わってきた。


「………いなくならないで…っ」


戦慄くような言葉とは裏腹、優の手に更に力がこもった。

地面に座り込んで後ろから抱き締められたまま、それでもシンは動けなかった。
冷たい地面に体が張り付いてしまったかのようで、優の声もただ聞き流すばかりだった。

その時だった。


「おや。これはこれは」


冷たい大気の中響いた声に、シンはびくりと肩を震わせた。
急速に血の気が引いてき、シンは恐る恐る視線を仰向けた。

白い月明かりに縁取られている薔薇十字団の残骸。
その瓦礫の上にその影はあった。
イザヤとそしてユダだ。


「今晩は。シン。パリの夜は冷えますね」


いつものようにイザヤは微笑んでいる。
だがシンの表情は変わらない。
青ざめたシンの表情に色が戻る事はない。

シンを守るように優はイザヤの前に立ちはだかった。


「今晩は。女神」

「………今度は一体何の用事?」

「全ての始祖がようやく揃いました。お迎えにあがりました…と言いたいところですが、その前に…」


イザヤは優の後ろで座り込んでいるシンを見た。


「随分と無様ですね、シン」


びくりとシンの肩が震える。
イザヤは微笑んだ。


「女神の前でそのような醜態…私と同じ姿形でやめていただけませんか?」

「………っ」

「あなたは実に模範的な信者でしたからね。自分の素姓を知った衝撃…さぞかしのものでしょう。心中お察しします」


自分の胸を押さえ、イザヤは悲しげな表情を浮かべたがそれは実に白々しかった。


「これ以上生き恥を晒す事は耐えられないでしょう。だからシン…私があなたを、この世界から消して差し上げます」

「イザヤ!」


その言葉に優が神器を発現させたその瞬間、不意にその足元の地面が隆起し、煽りを受けた優はシンの傍から吹き飛ばされて地面に叩き付けられた。


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あきゅろす。
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