06 「…優!?お前、どうしてここに──!」 「これはこれは。女神もおいででしたか」 混乱しているシンを尻目に、イザヤは恭しげに一礼する。 「お久し振りですね。ご機嫌如何ですか?」 「…イザヤ……っ」 苦々しく呟いた優に意に介した風もなくイザヤは微笑むと、さて、と言って周囲を見回した。 「そのような無粋なものは納めなさい。エドガー・ロックウェル」 未だ対峙したままのイヴとエドガーにそう声をかける。 エドガーは検分するようにイヴとイザヤを交互に見比べ、やがて観念したように拳銃を納めた。 「……まさかおたくまでここに来るとはなぁ。完全に油断してたよ」 「私もシンとこちらに用事がありましてね。驚きましたよ、まさかあなた方がここにいようとは」 「もう、シンったら!来てくれるなら一言言ってくれればいいのに!」 満面の笑顔を浮かべてイヴはシンに飛び付いた。 イヴに抱き付かれようとも、シンは何の反応も返さない。 慌てる事も声を上げる事もせず、彼の見開かれた瞳は眼前に広がる景観を映したまま動く事はなかった。 「シン、一体どうしたの?何故そんなに呆然としているの?」 媚びるような声と共に、イヴはゆっくりとシンの頬に手を這わす。 冷たいその感触にハッとしたシンは慌ててイヴの肩を掴んだ。 「──イヴ!!なんで……どうして…!どういう事だよ、おい…!」 イヴの両肩を掴んだその手は震えている。 目の当たりにした現実に青ざめているシンに、イヴはあやすように微笑みを浮かべた。 「落ち着いて、シン」 「どうして科学技術がここにある!教団の掲げた主張は一体なんだったんだ!?『民族浄化』はなんのために引き起こされた!?…答えろよ、イヴ!」 「それは、私の口からお答えましょう」 説明役を買ってでたのはイザヤだった。 「そろそろ役者も揃った頃のようですしね」 その声に答えるように通路の奥から更に足音が響いてきたかと思うと、メイファとアナスタシアが現れた。 既に集っている顔触れに驚いている二人にイザヤは微笑みかけ、そして瓦解しかけのカプセル群に歩み寄った。 「では、シン。まずあなたの質問に答えましょうか。ここが──この場所こそが、始祖が誕生した場所になります」 振り返ったイザヤからこぼれた言葉に、シンだけでなく優達も愕然とした。 「そしてこれは、紛う事なき科学技術の恩恵によるもの。科学技術の力によって、始祖は再びこの世に姿を現す事が出来ている」 「…つまり、やっぱりお前ら始祖は、初めから始祖だったってわけじゃねぇんだな」 煙草に火をともしつつ、エドガーは呟く。 [*前へ][次へ#] [戻る] |