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04



「科学技術?そんな…だってここは……」


思わず後ずさる。
その時、がたんと踵が背後にあったデスクの足を蹴り、その上に重なるように置かれていた分厚いファイルが派手に散らばった。

優は慌ててその一冊を手に取り、はたと動きを止めた。


「…なにこれ、書類…カルテ?」


ファイリングされている紙を捲っていく。
一枚一枚確認していくうちに、それがどうやらあらゆる人物の個人情報を纏めたものである事を悟った。

生体番号。国籍。人種。性別。年齢。

そう言ったものが乱雑な字で書かれ、顔写真があったと思われる部分は何故か黒く塗り潰されている。

何枚か捲っていくうちに、優はそのファイル群がどうやらアジア、ヨーロッパ、アフリカと言った具合に地方別に分類されてある事に気付いた。

そして、その山のような書類群の中でも、例外無く一番下に記されている赤い文字の数値に優の眼は止まった。


「……なんだろ、この数字…」


パーセンテージで表わされている赤い文字の数値。
どの書面にも、値は違えど必ず一番下に書き殴られている。

値はまさにピンキリで、優はそれが何を意味しているのか思案に暮れつつ、更に一枚捲り──はたと動きを止めた。


その先にあったのは、初めて顔写真付きの書類だった。


写っていたのは、年の頃は優と同じくらいの少年だった。

明るい茶色の髪を基調にあらゆる箇所に赤やピンクやらのメッシュが入れられている。
その明るい外見とは裏腹、こちらを真っ直ぐ見つめてくる少年の双眸には底冷えするような憎悪が宿っていた。

その瞬間、優は冷や汗が背中を伝うのを感じた。


「この子…もしかして、アダム……?」


優が知っているアダムからは想像も出来ない程写真の中の彼は無表情だが、この特徴的な外見は見間違うわけがない。

ばくばくと激しく脈打つ鼓動を聞きながら、慌てて文字の羅列に目を通す。




生体番号:DR-029

国籍:ジャパン

性別:男

年齢:15歳




そこに書かれているのは、確かに一人の人間としての情報だった。


「…じゃあ、やっぱり………」


その時、優はその書類の上に付箋が貼られている事に気付いた。
見たところ、このファイルの中で付箋が貼られているのはこの一枚のみである。


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