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03



「一人は危ないアル、アナスタシア!うちらも一緒に行くヨ!」


声を張ったメイファにもアナスタシアは笑うだけだった。


「大丈夫ですわメイファ。すぐ戻ってきますから」

「仕方ねぇなぁ。気ぃ付けていけよ」


意外にもあっさりと了承したエドガーにメイファは振り返る。
有り難う御座います、と頭を下げ、二人を振り返る事なくアナスタシアは外に飛び出していった。


「エドガー。アナスタシア一人でもホントに大丈夫アルか…?」

「大丈夫じゃねぇな」

「だったら何で行かしたアルかー!」


ぎゃあぎゃあと後方で喚くメイファの声を聞きながら、エドガーは騒ぎの収まったホテル前を駆け抜けていくアナスタシアの姿を窓から見下ろす。


「何か知りたい事があるんだ。俺達に言わなかったって事は自分一人で確かめたいんだろ。好きにさせてやろうぜ」

「何かそれって寂しいヨ……」


拗ねたメイファの頭をエドガーはぽんぽんと叩くと、にっこりとそれであってどことなく意地の悪そうな笑みを浮かべた。


「まっ、だからっつってここで大人しく待つつもりは無いけどな。メイファ、悪いが留守番頼めるか?」

「……ちゃんとみんなで戻ってきてヨ?」

「分かってるって」


言い残し、エドガーは白衣を翻してパリの街中に降りていった。



◇◇◇



「…見失ったか」


人気の無い廃れた路地で、ユダは舌を打ち鳴らすと神器発現を解いた。

途端、どっと襲ってくるとてつもない疲労感と倦怠感。
忌々しげにユダは舌を打ち鳴らした。

発現も分離も未だ発展途上の身であるユダにとって、長時間の神器発現は負担が大きい。

その事実に苛立たしげに舌を打ち、その代わりに背中に背負っていた銃身に手を伸ばした。
陽光の下で、狙撃銃が不気味に光沢を放つ。


狙撃銃・ドラグノフ。


(俺の武器)


目覚めた時から側にあった、もう一つの自分の得物。

傷だらけの銃身。
トリガーには幾度となく引き金を引いた痕跡があり、ところどころ塗装も剥げてしまっている。
使い古された痕跡のあるそれをユダは万一に備えて腕に抱き、息を殺して周囲を探った。

気配は何処にも無い。
どうやらこの周辺には女神はいないらしく、今日何度目になるか分からぬであろう舌打ちをした。


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あきゅろす。
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