06
「…ちっ!」
舌を打ち鳴らしたシンを、その者は片目だけで恨めしそうに見上げ、喉から怨嗟の声を絞り出した。
『ゆ…るさない…異端、審問官…──』
シンの顔付きが激変する。その瞬間、彼は目にも留まらぬスピードで剣を払い、今度こそその者の頭を吹き飛ばした。
砂が風に浚われていく。
「おいおい。また薔薇十字団の厄介事かよ」
「…っ知るかよ!勝手な逆恨みだ!」
文字通り吐き捨て、シンは乱暴な足取りで残った砂を踏みにじるように別の車両へと進んでいった。
「あーあ。また機嫌損ねちまったか」
エドガーはまだ地に伏している残党に、終わりだと言わんばかりに引き金を引く。悲鳴を上げる暇もなく、それらは瞬く間に砂と化していった。
「やっぱりエドガーも、薔薇十字団の事憎んでる?」
吹き込んできた風に砂が浚われるのを眺めながら、優はそう尋ねた。
「んー?」
仕事終わりの一服と言わんばかりに煙草を取り出したエドガーを振り返る。彼は紫煙を吐き出し、指に挟んだ煙草を弄びながら答えた。
「ま、それなりにな」
その眼差しから、彼にしては珍しく本心からの答えのようだ。
「『民族浄化』の被害国じゃないのに?」
「被害国だとかそうじゃないとか関係無ぇよ。都合が良すぎる──お前さんはそう思わねぇか?『民族浄化』だとかわけの分からねぇ大義名分掲げやがったくせに、奴らは科学技術を使ってる。実際見ただろ?」
「…」
携帯灰皿に煙草を押し付け、エドガーは銃を戻すと汚れを払うように白衣の裾を叩いた。
「俺達科学技術推進国を異端と見なすのは構わねぇよ。だが、実際奴らの正体はあんなんだ。大層な大義名分掲げて、あんな甚大な被害も出して、なのに奴らは科学技術を使っている。何も成し得ちゃいねぇ、無意味な殺戮をしただけだ」
「だったら『民族浄化』って一体なんだったの?」
──彼らは、一体何を成し得たかった?
「科学技術に対する報復」
短くエドガーは告げた。薔薇十字団が掲げる、名目上の答えを。
紫煙が風に浚われる。
「やめようぜ、不毛な会話だ。俺達が談義しても所詮出るもんは全部憶測だ」
「…そうだね。シンを追いかけよう」
一応神器は発現させたまま、優は踵を返して別の車両に向かっていった。
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