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05




◇◇◇



「うわあああん!も、もう嫌アルー!!」


完全に恐慌状態のメイファを麻袋のように担ぎ上げ、アナスタシアは襲いくる化け物共を全て一刀もとに切り捨てていた。

四肢を切断しても襲い掛かってきた彼らの弱点はどうやら頭部のようで、必要最低限の動作で化け物共の頭部を切断する。その度彼らは砂となって崩れ落ち、足の踏み場もない程車両の廊下は砂で埋め尽くされていた。


「もう、メイファ!しっかりして!」


「む、無理アル、うち戦えないアル!うち、あいつらに拳ぶつける勇気ないヨ…!」


そう泣き喚くメイファの意見も最もだが、かと言って彼女を担いだままではうまく動き回れない。


「…大体、一体なんですの!?こんなもの私見た事ありませんわ!」

「西欧じゃ普通じゃないアルか!?」

「そんな馬鹿な話ありませんわ!」


目の前で脳天を一刺しされ、轟いた悲鳴にメイファは目を瞑る。
化け物は露になった声帯を震わせ、か細い声を絞り出した。


『……お、のれ……“民族、浄…化”………』


メイファは弾かれたように顔を上げる。最後の一体だったそれは、目の前で砂となって崩れ落ち、窓から吹き込んできた風に浚われていった。


「…これで、ひとまず終わり…」


先程の単語が聞こえなかったのか、アナスタシアはメイファを下ろすと額の汗を拭った。


「……」

「メイファ。乗客の方達の安否を確認しに行きますわよ」

「あ、うん…」


砂から無理矢理視線を引き剥がし、メイファはアナスタシアの後をついていった。



◇◇◇



一方の優達は特に苦戦を強いられる事もなく、確実にその化け物達の数を減らしていっていた。

手馴れた動作でエドガーが引き金を引いて襲いくる化け物の眉間を貫き、優とシンが首を吹き飛ばす。作業的なその流れにより、足元は砂で埋め尽くされ、虫の息の化け物は地に這いつくばったまま、ひくひくと痙攣を繰り返していた。


「もうこれくらいでいいかな…」


汚れを払うように神器を回転させ、優は誰ともなく尋ねる。


「アナスタシア達と合流しよう。道すがら負傷者がいないか確認すればいい」

「二人共無事かなぁ…」

「あーあ。余計な運動しちまったよ」


エドガーが煙草に火をともすのを尻目にシンは踵を返す。刹那、その足元でぴくりと化け物の壊死した指先が動き、次の瞬間、物凄い力でシンは足首を掴まれた。


「!」


まだ動く気力のある化け物がいたのだ。振り払おうにもその力は意外にも強く、離れようとしない。


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