04
「お願い。答えて」
「…、……俺は…───」
その時だった。
突如轟音と共に列車が激しく揺れて優はバランスを崩し、気付いた時にはシンの胸に飛び込む形となっていた。
「なんだ!?」
守るように背に回された腕と、すぐ目の前にある胸に頬に一気に熱がたまる。二、三度、列車を凄まじい轟音が揺るがし、あちこちで悲鳴が上がった。
「…おいおい騒がしいなぁ、一体なんだってんだ──」
煙草を銜えたままエドガーが客室から顔を覗かせ、そして目の前で──意図的ではなくとも──抱き合っているような格好の優とシンを見て、一瞬反応に困ったようだが、すぐに室内に引き下がっていった。
「すまん若人、おじさんお邪魔なようだ」
「ちょ…おい、おっさん!なに勘違いしてんだ、あんた!」
慌てて体を引き離し、シンは暗がりの外を覗き込む。列車は相変わらず走行中で、見る限り異常は感じられない。
「一体、何だったん───」
その時、優の真上の天井を突き破って何者かが侵入してきて、体が反応するよりも早く、気付いた時優の体は軽々と引き上げられていた。
「!なに──!」
背中の者を蹴り上げようと振り返った優は、次の瞬間、声を失った。
そこにいたのは、この世のものとは思えない異形の者だったのだ。
人の型を為しているものの、それはあくまで形だけであって違う。腐敗の進行した肉は削げ落ち、所々白い骨を露出している。全身の皮膚組織は破壊され、そして、今まさに優を掴み上げているその腕の皮膚もただれ、板張りの廊下に嫌な音と共に落下し続け、何筋かは優の制服にも垂れてきていた。
化け物──そう認識した途端、喉から悲鳴が迸る。
その時、頭上を一筋の電光が走ったかと思うと、優を掴み上げていた化け物は汚らわしい悲鳴を上げ、瞬く間に砂と化して崩れ落ちていった。
「優!」
シンの声を聞きながら、へたりと座り込んだまま、優は化け物の名残の砂山から目を離せずにいた。がたがたと体が震える。
(…なに、今の───)
腰を抜かした優のすぐ後ろで銃器を取り出した音がする。
「ボーッとしてる暇は無いみたいだぜ」
エドガーの声に顔を上げると、廊下の一角から先程と同じような化け物達が列をなしてこっちに向かってきていた。
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