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02



「シンって、案外フェミニストなんだよねぇ」

「はっ?」


素っ頓狂な声を上げたシンを尻目に、優は彼の横に並ぶようにして立った。瞬間、直に吹き込んできた冷たい突風に、思わず身が竦む。


「寒ー!ちょっと、シン寒くないの!?」

「はっ。俺達の外套は耐熱防寒仕様なんだよ」

「なにそれ、せこっ!」


羽織っているカーディガンの袖を精一杯伸ばし、優はすっぽり包んだ手で己の腕をさすった。

仰いだ空に広がる星空に、優は感嘆の息をもらす。

月並みな表現だが、宝石を散りばめたような夜空。ジャパンのような高層ビルの立ち並ぶ国では絶対に見られない圧倒的な輝きに、優の瞳は奪われた。


「凄い…」

「ジャパンじゃ見れないのか?」

「うん。田舎の方に行けば、まだ見れるかもしんないけど」

「ふうん」


さも興味無さげに呟いたシンの横顔を優は見た。


「ねぇ。シンはなんで異端審問官やってるの?」

「あ?」


藪から棒な質問に当然の反応を見せるシンだが、優は構わなかった。


「ってか、どんな経緯で?やっぱりシンの意思?」

「んだよ、突然」

「今ふと気になったの。ねぇ教えてよ」


食い下がらないと見たのか、シンはあからさまに眉間に皺を寄せ、ややあってぽつぽつと語り始めた。


「経緯っつわれても…気付いたらなってたんだよ」

「?」

「俺、記憶無いんだ」


急に突き付けられた言葉に、優は言葉を詰まらせた。シンの視線は外に注がれたまま、決して優に向けられる事はない。


「親の事とか自分の事とか、何も覚えてないし分からない。気付いたら教団にいて、気付いたらシンって呼ばれていたんだ」

「……」

「イザヤなんだ。異端審問官としての手解きも信条も何もかもイザヤから教わった。尊敬していたし、いつか越えるつもりの目標でもあったよ」

「……辛い、よね。イザヤと戦うの」


そう言った優に、シンは肯定も否定もしなかった。ただ、その目は真っ直ぐ前だけを見据えていた。


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