07(終)
「優!メイファ!」
「なんだよ一体!」
その時、階下から騒ぎを聞きつけたシン達が駆けてきたが、メイファはやはり動けなかった。
震える唇が微かに動く。
「…アダム──…」
喉から絞り出すような声で呟いたメイファから、全てを悟り、アダムは顕著なまでに色を失った。
彼の周囲で風が頼りなさげに揺れる。
「メイファ…お前──」
それ以上は言葉にならなかった。
次の瞬間、暴風が辺りを包み、優達から悲鳴が上がった。
渦を巻く暴風は船の甲板を剥ぎ取り、空高く舞い上がらせる。皆は目を瞑り、吹き飛ばされないようにものにしがみつくのに必死だ。
自身も吹き飛ばされないよう柱にしがみついたまま、そんな状況下であろうとも、メイファは無理矢理目をこじ開けた。
風の中心にアダムはいた。
メイファは彼の名を叫んだが、それは風の音に掻き消されて、自分の耳にすら届かなかった。
そうなのにアダムは顔を上げた。風の壁の向こう側でアダムはメイファを見つめたまま、眉尻を下げて笑った。
「────」
微かに動いた唇は、何かを伝えたかったのだろう。だが、やはりそれは風の音に掻き消されて、少しもメイファの耳に届く事は叶わなかった。
次の瞬間、風は一際激しさを増し、さしものメイファも目を瞑った。
風は発生した時と同じように唐突に止み、恐る恐る目を開いた先には、アダムの姿は忽然と消えた後だった。
ただ、彼のいた名残のように、強めの風がいつまでも船上を渦巻いていた。
to be continued...
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