04
「気になりますの。シンは“優”をどう思っているのか」
「あんたはどうなんだ、アナスタシア」
「彼女は優ですわ。私の思いは変わりません」
「………」
「これは、薔薇十字団員であるシンにとって簡単に答えが出るものじゃないと思いますけど、これから一緒にいる上ではどうしても避けては通れない問題ですわ」
「…今、答えが必要な問題か?」
声の調子を落として尋ねてきたシンに、アナスタシアはゆっくりとよく見えるように、かぶりを振った。
「いいえ。ただ…身勝手かもしれませんが、優を女神だとあまり意識してほしくないんです。私は、優が自分自身の事をどう思っているのか分かりません。ですけど、優は優なんです。だから──」
「…わかってるよ」
軽い溜め息と共に呟かれた言葉に、アナスタシアは顔を上げた。
シンの視線はテーブルに置かれた紅茶に注がれている。
二人の視線は決して絡み合わない。
シン、とアナスタシアが呼ぶよりも早く、シンが先に口を開いた。
「俺はこれからあいつといて、それで結論を出す。そのつもりだ」
シンはアナスタシアと一回も視線を合わせようとしない。その唇から流水の如く言葉を紡ぎ、シンはそれきり押し黙ってしまった。
彼の視線は依然として紅茶に注がれたまま、二人の視線は絡まない。
「…そう、ですの。だったら──…いいえ、分かりましたわ。…ごめんなさい、シン」
だからアナスタシアはそう返すだけで精一杯だった。
そして、そう言ったアナスタシアにもシンは視線を落としたまま「いや」と答えただけだった。
性急に答えを求めてしまった事に、アナスタシアは罪悪感を感じつつも、無理矢理いつもの笑顔を貼り付けた。
「…私、お手洗いに行ってきますわ。どなたか帰られたらそう伝えて下さいね」
そう言い残し、アナスタシアはあっという間に外へと出ていった。
シンただ一人となった室内に静寂が降りる。
吐いた溜め息と共に、自然と強張っていた体から力が抜け、シンは深くソファにもたれかかる格好となった。
「…分かんねぇんだよ」
自然と唇からそう漏れた。ゆっくりと両腕を掲げ、拳を合わせる。
精神を研ぎ澄ます。次の瞬間、青白い雷電と共に神器が一瞬にして抜刀された。
ばちばちと、刀身の周囲で火花が爆ぜる。
その細身の刀身に映り込んでいる自身をしばし見つめ、ややあってシンは自身の得物を項垂れるように下ろした。ぎりと唇を噛み締める。
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