04
そんな少年は終始ハイテンションで、店の前で立ち止まってはアクセサリーを買ったり、食べ物も買ったりしていた。
そんな少年に誘発され、メイファもメイファで大量のお菓子を買い食いし、今さっき出会ったばかりだと言うのに二人はずっと友人だったかのように日が暮れるまで遊んだ。
「アイヤ〜。財布ん中、スッカラカンアル〜」
西日が射し込める公園のベンチに腰掛け、財布を逆さまにしてメイファは溜め息をつく。
「お小遣い無くなっちゃったネ」
「えーやん、えーやん。腹むっちゃ満たされたし」
大きく伸びをし、少年はお腹をさすって満足げな笑みを浮かべている。
「あーあ。でも世界ってのはこんなんやったんやなぁ。俺、全然知らへんかったわ」
そう言った少年の西日に照らされた横顔を眺めながら、メイファはずっと気になっていた事を尋ねた。
「あんた、名前なんアルか?」
「名前ー?」
うーん、と少年は首を傾げた。
「俺の名前ー?うーんと…──あーあかん、忘れてもうた」
「はィ?」
「うーん…最近新しい名前もらったばっかなんやけど」
「…」
困ったように頬を掻く少年の横顔を、メイファはただ見つめている。
「なんやったかなぁ、新しい名前。いまいち馴染みないけん、どうも俺の名前っていう意識に欠けるんよなぁ」
「自分の名前忘れるなんてあんた変ヨ」
思ったまま素直な感想をこぼしたメイファに、少年は笑った。
「せやろー?俺かて思うもん。あっ、せやけど呼ばれたら反応出来るんやで?頭で理解する前に体がちゃんと反応してん」
「自分では名前分からないのに?」
「変な話やろ?」
笑いながら少年は視線を前方へと移し、そしてその目を僅かに眇めさせた。
彼の雰囲気が変わった事を悟り、メイファも倣って前を見る。公園の入り口付近に、不思議な形の外套に身を包んだ男達が、必死な様子で忙しなく駆け回っている。
「…あかんわー」
そう呟いた少年からメイファは全てを悟った。
「まぁ、時間的にもう限界やろうな」
少年は反動を付けて立ち上がると、メイファの手を取った。ざわりと彼を取り巻く空気が変わる。旋風が少年の周囲を取り囲み、メイファは少年の顔を見上げた。
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