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03


それは、まだ幼い少年だった。

幼いと言っても、年の頃は優と同じくらいだろう。明るい茶色の髪にはあらゆるところに赤やピンクやらのメッシュが入れられていて、騒々しい事この上ない。長く伸ばされた襟足は、一際明るく赤に染められていてそれがメイファの目を引いた。

細い体は真っ白なノースリーブ状のカッターシャツに身を包み、その中でチェックのネクタイが緩く巻かれている。投げ出された四肢は黒のスラックスに覆われ、その上に同色のスカートと、金具で細工の施された、これまた黒のブーツに覆われていた。


「な、なにすんねん、お前!」


顎を押さえ、涙目で少年は声を荒げる。


「それはこっちのセリフヨ!急に人の上に落っこちてきて、一言も弁解無しアルか!?」

「ん?…あぁ、せやな。ほんまごめんなぁ。まだ制御とか発現とかよく分からんねん。せやけど、ぎりぎりでブレーキかけれてよかったわぁ。まだ死にたないもんなー」


うんうん、と一人で話して一人で納得した少年をメイファは奇異なものを見るような目で見た。何を言っているのかよく分からなかったが、ただ一つだけ気付いた事があった。


「変な訛り。どこの人?」

「それはお互い様やろ。そういう自分こそどこのモンやねん」

「うちメイファ。チャイナ出身ヨ」

「あーチャイニーズな。合衆国なんかで何してん」

「諸事情ヨ」

「あ、奇遇やね。俺も諸事情やで。なんか最近目覚めたばっかやのに、わけわからん命令言い渡されてん。さっきもその事でちょっとした話し合いやってたんやけど、面倒やったし抜け出したら案の定追い掛けられたんやって」

「あ、だから上から降ってきたアルか」

「そっ」


言って少年は大きく伸びをし、悪戯が成功したような顔で笑った。


「あいつ今頃必死こいて捜してんやろなぁ。ふふん、俺に追いつけるわけないっちゅーの」


そう言って少年はよっと立ち上がると、メイファの顔を覗き込んできた。彼の大きな瞳は好奇心に輝いている。首を傾げたメイファの前で、少年はにこーっと笑った。


「メイファやったっけ?ちょお、一緒に遊ぼうやぁー」

「へっ?」


目を瞬かせたメイファの前で、少年は唇を尖らした。


「やって俺最近起きたばっかで何も分からへんのやもん。な、な?一緒に遊ぼ」

「行く行く!うちも遊ぶアル!」

「やった!決まりやな!」


ノリのいいメイファの反応に嬉しそうに笑い、少年はメイファの手を引くと大通りに飛び出した。


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