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やっとの思いで車も直り、夜という事もあって結局優達はロックウェル家に引き返した。その日はリネットの厚意により家に泊めてもらい、朝起きた時にはエドガーの姿は無く、既に職場に向かった後のようだった。その事を尋ねた時リネットは、


「エドガーって無遅刻なのよ」


と、嬉しそうに語っていた。

そんな最中シンは合衆国からなんとか脱出する術を探していたが、西欧諸国に向かう便は船はおろか飛行機もない事実に苛立ちを隠さずにいた。


「…なんだよ、どうしてこんなに便数が無いんだよ」

「シン。苛々は体に良くありませんわ」


時刻表をテーブルに投げ付けるシンを宥めるアナスタシア。既に数度目のやり取りである。客間のソファにもたれたまま、優はクッションを抱き締めた。


「西欧に直通ってのはさすがにないか」

「唯一チャイナに寄港する便があるんだ。けど、それも週に一便しか出ない」

「ロン爺元気かなぁ〜」


ソファに寝転がったまま腰回りに纏わりついてくるメイファを撫で、優は「そうだね」と相槌を打った。


「メイファはチャイナ出身ですものね」

「そろそろ国が恋しくなっちゃったかなー?」

「そんな事ないもーんだ!」


メイファは満面の笑みで返す。


「だって優達楽しいもん!ロン爺やみんないなくてもちっとも寂しくなんかないアル!」

「まぁ。嬉しい事言ってくれますわね」

「…あと一週間か。タイミングが悪すぎたな」


ソファに大きくもたれかかったシンの言葉に、メイファはがばりと上体を起こした。何故か目を輝かせながら。


「って事は暇って事よネ?やったアル、だったらうちちょっと街に行ってくるヨ!」


言うや否や、ぴょんっとソファから飛び降りたメイファに慌てて優は振り返った。


「メイファ!一人で大丈夫?迷子にならない?」

「大丈夫ヨ!うちそんな子供じゃないネ!」


手を振り、メイファはあっという間に飛び出していった。



◇◇◇



「アイヤー。ビルばっかアルー」


ロックウェル宅のある郊外を出て数十分。ワシントンの中でも一際往来の激しい通りの真ん中で、メイファは周囲にそびえ立つ眩暈がしそうな程の高層ビル群を見上げて、思わず感嘆の息を漏らした。


「チャイナとはやっぱ違うネ」


風土や価値観の相違もあるだろうが、同じ科学技術推進国とは思えない。


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あきゅろす。
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