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私と携帯獣
いってらっしゃい
ドサドサッと今にも崩れ落ちそうだった資料が、ついに落ちた。

原因は、博士の大声である。



「ええ!?オーキド博士に会って、ポケモン図鑑を貰った!?」
「はい、そうなんですよ。ほら、これ」



そう言って私がウツギ博士に手渡したのは、全体的に赤い光沢のあるコンパクトな機械。

ポケモンじいさんの家に入ると、そこには白衣を着た初老の男の人がいて、「このポケモン図鑑を君に授けよう」とこの機械をくれたのだ。

その人の名前を聞いて、さすがに私もビックリした。

オーキド博士。

毎日やっているポケモンラジオ講座は私もよく聞いているし、何と言ってもポケモン研究の第一人者だ。

今まで声しか聞いたことがなかったけれど、そんなポケモン界の重鎮に私は出会ったのである。



「すごいねえ、タキちゃんは…オーキド博士って自分の見込んだ人にしか図鑑をあげない人だから」
「そうなんですか?」



てっきり出会ったトレーナー全てにあげてるものだと思っていたけれど、そういうわけではないらしい。

ウツギ博士から返された図鑑が、妙に貴重なものに感じる。

そして同時に、私にとってこの上なく嬉しいものにも感じた。

これから出会う全てのポケモンが、この図鑑に保管されるのだ。

言いかえれば私と世界中のポケモンが出会っていく過程を一つずつ保存してくれるもの。



「博士」
「うん?」
「ヒビキはチャンピオンを目指すって言っていたし、コトネは博士のお手伝いをするんでしょう?」
「そうだね」
「…私は、いろんなポケモンや人と出会うために旅をしてきます。この図鑑と一緒に」



これは本心からの言葉だ。

いろんな人と出会いたい。

もしかしたら好きでどうしようもなくなる人もいるかもしれないし、逆にどうしたって好きになれない人もいるかもしれない。

でも、会いたいのだ。

世界を見て、その中での自分の存在を、見たい。

私の言葉を聞いた博士は、にっこりと笑って「そう」と頷いた。



「素敵な目標だと思うよ、君によく合っているものだしね」





研究所を出て自分の家に戻り、ヒノアラシをお母さんに紹介してからすぐ出発。

なぜかお母さんは私が旅に出ることを了解していた様子で、ポケモンフードだとかそういったものを一式揃えていてくれた。

すごい、お母さん凄すぎる。

テンポ良く渡される荷物を手に持っていけば、最後にお母さんは私の背中を軽く押して言った。



「行ってらっしゃい」
「…行ってきます」



どんな表情をして送り出してくれたのか、それは私にもわからない。

でも、強く誓ったことはある。

必ずここに戻ってこよう。

お母さんに、全国の思い出をたくさん話すんだ。



(ついに行きますよ、ヒノアラシさん!)
(ヒノヒノ!)
(うん、いい返事)

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あきゅろす。
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