Vongole Company
087お邪魔虫
「おっ、悠南か?!」
山本さんの声が聞こえる。
心配したんだからな、と暖かい声色。
思わず山本さん!と叫びたくなるけどグッと我慢。
どんなに優しくされても…あそこには帰れないんだから!
「元気か?」
「…はい」
山本さんは相変わらず優しい声で。
私は鼻を啜りながら答えた。
なんで泣きそうになってんだ、私…!!
「今どこにいんだ?」
あまりにも自然に山本さんは聞いてきて。
私はうっかりヴァリアーってとこです、と答えそうになった。
慌てて口をつぐみ、代わりに
「へへ…」
と軽くごまかす。
私のごまかしように山本さんは受話器の向こうでフーッと息を吐いたようで、ゴーッという音が聞こえた。
しかしすぐにガッという音がし、受話器の向こうで
「あ、なにすんだ、雲雀!」
という山本さんの焦った声が聞こえる。
ま さ か
私の手から脂汗が出はじめ、電話を持つ手が滑る。
小さな沈黙。
そして受話器の向こうでフフッという笑い。
こ の 笑 い 方 は … ! !
「やぁ、悠南
自由気ままな家出は楽しいかい?」
「ひ、ひばば、雲雀しゃん…」
嗚呼、可笑しいな。
受話器越しで会話しているのに。
溢れ出る雲雀さんの殺気を感じる。
思わずびくついた私はどもるわ、噛むわの大惨事。
雲雀さんはフンと笑い、
「初めて会話したときみたいだね」
と皮肉たっぷりに言う。
そして、次に口を開いたのはまたしても雲雀さんの方だった。
「で、どこにいるの?
言わないと咬み殺すよ」
これは 脅 し だ…!!
いやね、もう家出した時点で雲雀さんに咬み殺すのは目に見えていたこと。
ただ、いざ本人に言われると…
あれ、手に体温を感じないや…
なかなか答えない私に痺れを切らしたのか、
「ねぇ」
と少し語気を強める雲雀さん。
私はギュッと目をつむり、電話では見えるはずもないのに頭を下げた。
「ごめんなさい、もう帰れないんです…!!」
「なんだ、俺らのこと嫌いになったのか?」
いつの間に代わったのか、声が低く大人な人物に代わっている。
「リ、リボーンさん…」
「俺らのこと嫌いになったのか、って聞いてんだ、答えろ」
そんなの…
決まってるじゃないか。
「皆さんのこと…
大好きですよ…!!」
思わずギュッと服の裾を握りしめる。
手を開いて見てみれば、服はクシャクシャによれていた。
「だったら早く」
と続けようとするリボーンさんの言葉を遮り、私はさらに大きな声で言う。
「でも、わがまま言って綱吉さん傷つけた私になんて帰れないんです!」
涙が頬を伝う。
なんだ、さっきから熱くてしょっぱかったのは涙だったのか。
私だって分かってる、綱吉さんに悪気がなかったこと
私によかれと思ってしてくれたということ
でも、そんなにも優しくしてくれた綱吉さんに私は
大嫌い
と言い残し、出てきてしまった。
扉を出る間際の綱吉さんの悲痛そうな顔が忘れられない。
私はグスッと鼻を啜った。
私の言葉を聞いたリボーンさんが
「そんなに自分責めてんじゃねぇ、帰ってこい」
と言ってくれたけれど。
私は帰るという選択肢を取る決心がつかず、返事をすることが出来ない。
「悠南、どこにいるか教えろ」
いつにないリボーンさんの優しい声色に私の心が揺れ動き、とりあえず口を開こうとしたときだった。
「シシッ、悠南は王子たちのもんになったから♪
じゃな♪」
突然背後から携帯が取り上げられ、強制的に電話を切られる。
私が呆然と振り向くと、ベルさんがシシッと笑っていた。
な、なんてやつだ、コノヤロウ…!!
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