Vongole Company
078大きな勘違い
ゔっ、気持ち悪い…
この車、何時間走り続けているんだろう。
正確な時間は分からないけれど、少なくとも一時間は経過している。
しかもトランクは車の振動が直に体に伝わり、もとから酔いやすい私はいつ嘔吐してもおかしくない状況。
運転しているスクアーロさんはなぜかアンパン●ンを熱唱しているし。
乗る車を間違えたか、と後悔し始めたときだった。
急ブレーキがかかり、発車時同様壁に頭をぶつける私。
痛い、痛いよ、これは…!と頭をさすっていると、運転席のドアが開く音が聞こえた。
そして同時に出迎えの声も聞こえる。
「あらぁ、スクお帰りなさい!
山本武とはお話できた?」
「あぁ、話せたぞぉ
けどなぁ、最後に女隠してんじゃねーかってうるさかったぞぉ!!!」
……男声なのに、女口調…? オカマ?
スクアーロさんは犯人扱いされたことがいまだに心に引っ掛かるらしく、愚痴をこぼす。
もう一人のオカマさんは、あらあら、と軽く相槌をうち
あぁっ!!!
と大声を上げた。
私はピクリと体を動かす。
ばれたか、と不安になる私。
しかしオカマさんは違うことを言っていた。
「京子ちゃんがいたでしょう?
あの娘からハチミツパックを貰ってきてくれたわよね?」
京子さんからハチミツパック…?
京子さん、オカマさんにも知り合いがいるとは…!!
スクアーロさんはもう慣れた大声で返事をした。
「ああ、笹川京子から貰ってきたぞぉ!!
後ろのトランクの下に入れてきたぁ!!」
「さっすがスクね!」
へぇ、ハチミツパックはトランクの下に……って、
え?
ト ラ ン ク っ て こ こ じ ゃ ん ! !
おかしい、トランクには何も無かったはずなのに、と私は暗闇の中を音を立てずに手足をばたつかせる。
うん、障害物はない。
しかし、寝ている床を触ってみれば…
なんか掴むところあるゥゥ!!!!
多分この下にまだスペースがあるのだろう。
つまりこの下にハチミツパックはある。
たらーっと冷や汗が額を伝う。
ハチミツパック♪と近付いてくる声と足音。
人の気配がなくなったら出ようと思ってたのに…!!
ついに足音が近くで止まる。
そして無情にもトランクは開かれた。
目に写るのは久しい日の光。
逆光で人影の顔は認知できない。
「あらぁ??!」
トランクを開いた人物は驚きの声を上げ、口を手で押さえる。
私も何がなんだか分からない。
けれど。
「こんにちは」
とりあえずご挨拶。
うん、もうばれちゃったしね、隠れてもしょうがないよ…!!
という半やけくそ精神でニッコリと笑った。
ようやく目が慣れ、トランクを開けた人物の表情もよく見える。
トランクを開けたオカマさんは
「あら、こんにちは」
と笑顔で返してくれた。
ふふふ、とお互い微笑み合う。
そしてオカマさんは手を口の横に添え、叫んだ。
「スクちゃん、彼女置いてっちゃ駄目よー!!」
違いますゥゥ!!!
とんでもない勘違いをしているオカマさん。
やっぱり乗った車を間違えました…!!
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