Vongole Company
特:02
試験勉強を初めて何分経っただろう。
学校から帰ってきて、そのまま広間の机を借りて勉強をしていた私は珍しく集中していた。
でもその集中力が私にそんな長く続くはずもなく、クイッと身体を伸ばして休憩した。
「ほっ」という掛け声はあれだ、その………自然現象だ、うん。
身体を伸ばした後にぐてーんと机の上に伏してみた。
そう、今日は幹部の人は誰もいないから自由な夕方なのだ…!
自由最高、とそのまま伏していると、扉が開く音がした。
え、何なの、一体。
まさか私の自由を奪うためにブラックオーラ満載のリボーンさんが…!?
「ああひどい、ひどいじゃないか、リボーンさん。鬼、悪魔、イケメン」
「悠南ちゃん?」
「謎の大人フェロモン、いじめっ子…」
「悠南ちゃーん!」
「…ぬおっ!?」
肩を叩かれ、振り返れば…―。
なんだ、リボーンさんだと思っていろいろ愚痴っていた自分が馬鹿みたいじゃないか。
いや、馬鹿か。
「京子さん、ハルさん!」
「はい、悠南ちゃん」
「え?あ、ありがとうございます…!」
「…悠南ちゃんの好きなココアはこっちに置いときますね!」
広間に入ってきたのは京子さんとハルさんだった。
京子さんは私にブランケットを、ハルさんはココアを持ってきてくれた。
なんて優しさだ、涙が出るぜ…!
「イーピンちゃんから聞いたよ、試験受けるんだってね」
「ハルたち全力で応援しちゃいますから、なんでも言ってくださいね!」
この言葉に私の涙腺は決壊した。
修復不可能、もう涙を止める気もない。
言葉にならない呻き声で「ありがとうございます、頑張ります」となんとか伝えた。
誰か手厳しいツッコミをする人がいたなら『キモい』と突っ込まれそうな声だったけど、そんなことを言う人はここにはいない。
暖かいブランケット、そしてホッとする甘いココア。
ココアを一人ほんわかした気分で飲んでいると、広間の扉が開いた。
京子さんとハルさんは買い物に行くと言って出掛けているし、平日の夕方だからイーピンちゃんはバイト。
幹部さんたちも今日は皆出払っているはず。
不思議に思って振り返ると、そこにはクロームさんがちょこんと立っていた。
私の視線に気づいたのか、ちょこちょことこちらへ近付いてくる。
そんな一挙一動が可愛いよ、クロームさん…!
「……あの、これ」
「へ?」
目の前まで来たかと思うと、何かを差し出される。
花柄の袋でラッピングされたものは、随分と小さめ。
そしてそれを持つ指は、なぜか絆創膏がたくさん貼られている。
受けとると、クロームさんはタタッと広間から出ていってしまった。
「指どうしたんですか……あ、クロームさん!」
ほんの一瞬の登場だった。
行っちゃった…と肩を落とせば、目に入るのは渡された小さな包み。
これを誰が見ないでいられようか、いや皆見るでしょ…!
カサカサとわずかな音が広間に響き、中から出てきたものを私はパチパチとガン見する。
そしてすぐにまた涙が流れた。
もちろん嬉し涙です、ハイ。
「可愛いよ、クロームさん…!」
中に入っていたものはクロームさんが作ったらしい特製お守り。
パイナップルの刺繍が片面に入っているのがクロームさんらしいというか。
あの絆創膏だらけの指はお守りを作るときに怪我しちゃったのかな、と思うと胸の奥がツンとすると共に暖かい気持ちが溢れた。
そしてそのお守りを握りしめ、私はまた勉強を再開させた。
20110206
まさかの一年越しの企画でございます。
本当に申し訳ないです、というかまだ間に合うのかなという不安の方が多い事実。
一発目に女の子たちを書かせてもらいました、でもビアンキ姉さんどこ行った…←
イーピンちゃん名前だけの登場ってこれ…。
とりあえず次は男性陣の誰かを書きます、要望にあった台詞もなるべく使っていく方針で。
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